抄録
わが国には多様な看護教育機関がある.しかし,看護人的資源に関する政府統計は,隔年で実施される看護従事者届による断面調査のみであり,看護従事者の教育背景の傾向はわからない.そこで,長野県の全看護従事者(18,042人)を対象として,就学歴に関する調査を行った.回収数は10,021件で,回収率は55.5%であった.回答された就学歴から,中学卒業から看護資格を取得した教育機関までの経路が判明した9,477件を有効回答とした.看護師の資格を持つ者は7,548名,准看護師のみの資格を持つ者は1,929名であった.全体として,一般最終学歴が高校卒の者は90.5%,中学卒の者は9.5%であったが,50歳以上の年齢群では2割以上の看護従事者が中学卒であった.このことは継続教育や研修等を行うにあたり,年齢群によって教育上考慮すべき要素の存在を示している.年齢によって教育背景の分布に差があることを示した今回の研究結果から,縦断的に活用できるデータを持てば,年齢に応じた教育背景のトレンドを明らかにできるとともに,効果的な継続教育や教育戦略の策定に有益な資料となることが示唆された.