医療情報学
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26 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 原 量宏, 横井 英人, 岡田 宏基, 上野 哲夫, 渡辺 敏彦, 原田 顕徳, 橋本 英敬, 本田 宏茂, 坂本 尊志, 斎藤 幸夫, 尾 ...
    2006 年 26 巻 2 号 p. 93-103
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル フリー
     我が国の新薬開発のための臨床試験は,規制強化等の影響をうけ停滞する傾向にある.厚生労働省,文部科学省は,治験コーディネータ養成など,治験活性化計画を積極的に進めているが,欧米に比べ数倍のコストがかかる状況にあり,この状況を抜本的に解決するためには,ITの導入によって効率的で質の高い安価な臨床試験を実現することが不可欠である.我々は,Web技術と電子認証・電子署名の技術を統合し,医療機関の電子カルテと検査機関,受託臨床試験実施機関(CRO)のデータベースの間をシームレスに結び,しかも医師,薬剤師,看護師など多数の職種の間で,セキュリティとデータの真正性を保障できる大規模治験ネットワークシステムの開発に取り組んできた.技術的には,データセンタを核として,Web技術により複数の医療機関の電子カルテと検査機関,CRO・製薬企業のデータベースを標準的インターフェース(XML, HL7)によりデータ連携し,さらにセキュリティ確保を目的として,厚生労働省,ならびにMEDIS-DCの推進する電子認証・電子署名の技術を組み合わせたものである.インターネット環境下にあれば,全国あらゆる地域の医療機関が参加できることが大きな特徴といえる.本システムにより従来のように紙ベースで行っていた治験に比較し,より正確な情報を短期間に収集できることが可能になり,治験の効率を大幅に向上させることが確認されている.またセキュリティ確保に関しても,電子認証によるネットワーク上での本人確認に加え,電子署名がWeb上で作動することが確認された.
  • 仲野 俊成, 渡邊 淳, 大村 直人, 澤田 敏, 高橋 伯夫, 福泉 利彦, 廣川 陽介
    2006 年 26 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル フリー
     基幹医療施設ではPACSによる大容量画像配信等のバーストデータ通信に対応するため,通信システムに広い帯域(高速性)を確保することが要求される.このため,大型中央通信制御装置を用いたネットワーク構築や,画像データの事前配布等が実施されてきた.しかし装置が高価であること,運用手順の複雑化や管理工数の増加等が生じることが電子化推進のネックとなっている.
     今回我々は病院情報システムのネットワーク構築を行うにあたり,通信パターンを考慮した構築を行い,まず1000床規模の基幹医療施設(T病院,現在は600床)をモデルとし,小型(固定型ポート構成)のLayer 3(L3)スイッチで構築したネットワークを用い,院内オーダエントリ端末全600台中180台にアプリケーションを実装し,画像Web配信システム(Kodak DIRECTVIEW PACS System 5)を利用したオンデマンド画像配信の実証実験を行った.さらにこのネットワークを高度先進医療に対応してほぼ完全に電子化された600床規模の新病院(H病院,平成18年1月開院)に応用して,フィルムレス運用を稼働した.また,2病院間のWAN回線を用い,画像情報の相互参照も実現している.
     コア層および分配層に固定型ポートGigabit L3スイッチを配し各分配層の特性に合わせた情報を取り扱えるようにした.また,各分配スイッチとコアスイッチ間には等コストパス負荷分散とポート集約を実装した.H病院ではさらにL3スイッチをスタック構成にし,電子カルテ系と画像系の通信経路を区別した.各スイッチのインターフェースごとの通信量をPACS画像配信前より記録し,圧縮(wavelet)画像配信,非圧縮画像配信による通信量の変化を解析した.端末側では画像展開・再構成にかかる時間を評価した.
     画像配信によりトラフィックは増加したが,集中部分での通信量(5分間平均値)はT病院では帯域(1Gbps)の10%を超えず,さらに運用1カ月時点のH病院では帯域(8Gbps)の5%を超えていない.測定結果による負荷シミュレーションでは,本モデル規模での対応は十分可能であり,実際2病院における画像参照は圧縮,非圧縮のいずれも日常診療に十分対応できている.
     以上の結果,医療機関のネットワークにおける通信パターンや院内トラフィックフローを十分に把握することにより,効率的なネットワークを合理的なコストで構築できることが示された.
  • 岸 真司, 永野 泰之, 餅井 美愛, 沢田 潔, 浅井 広, 板津 武晴
    2006 年 26 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル フリー
     病院情報システムの運用において,本来の診療目的以外で患者個人情報が閲覧されることを防ぐことは重要な課題である.我々はこの課題に対して,閲覧記録を集計・監査する予定であることを2004年9月に院内に通達したのち,"利用者が同月中にオーダを登録していない患者のうち,患者が職員であってかつ利用者本人でないものに対する閲覧履歴"をシステムの利用者宛に毎月電子メールで通知する運用を2005年4月から開始した.その結果,一連の介入と時期を同じくしてアクセス動向に変化が認められ,職員である入院患者に対する入院病棟以外からのアクセスと,入院中でも外来受診日でもない職員である患者に対するアクセスが減少した.本集計に用いたような単純なアクセスログだけから診療業務目的の利用か否かを正しく判定できる確証はないが,患者個人情報保護に留意したシステムの利用について注意を喚起する目的で,今回の方法は有効と考えられた.
研究速報
  • 前田 樹海
    2006 年 26 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル フリー
     わが国には多様な看護教育機関がある.しかし,看護人的資源に関する政府統計は,隔年で実施される看護従事者届による断面調査のみであり,看護従事者の教育背景の傾向はわからない.そこで,長野県の全看護従事者(18,042人)を対象として,就学歴に関する調査を行った.回収数は10,021件で,回収率は55.5%であった.回答された就学歴から,中学卒業から看護資格を取得した教育機関までの経路が判明した9,477件を有効回答とした.看護師の資格を持つ者は7,548名,准看護師のみの資格を持つ者は1,929名であった.全体として,一般最終学歴が高校卒の者は90.5%,中学卒の者は9.5%であったが,50歳以上の年齢群では2割以上の看護従事者が中学卒であった.このことは継続教育や研修等を行うにあたり,年齢群によって教育上考慮すべき要素の存在を示している.年齢によって教育背景の分布に差があることを示した今回の研究結果から,縦断的に活用できるデータを持てば,年齢に応じた教育背景のトレンドを明らかにできるとともに,効果的な継続教育や教育戦略の策定に有益な資料となることが示唆された.
技術ノート
  • 富樫 秀夫, 栗原 勝, 折井 孝男
    2006 年 26 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル フリー
     医療用医薬品添付文書には,薬物療法において参照すべき重要な情報が含まれている.電子カルテ等の医療情報システムの普及が進んだ現在では,適応症や禁忌病態等の医療用医薬品添付文書にみられるキーワードとなる情報が必要であるものの,実用的に利用可能なデータはきわめて少ない.筆者らは,医療用医薬品添付文書データから,システムで利用可能な用語を抽出するシステムを製作した.また,用語から意味のある文字列の単位を抽出し,用語の意味を再定義するための手法を検討した.
     解析の対象は,薬価基準収載医薬品全品目とし,各用語は,病名・症状表現の他に,薬効としての作用,診療行為等の医療情報システムにおける薬物療法の妥当性チェックに利用可能なものとした.
  • 小野 保
    2006 年 26 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル フリー
     保健師は,他の看護職者に比べ,看護活動の領域が広く,また看護の対象も様々である.そのため,状況把握,問題分析,分析結果を基に,次にとる行動を考える能力等が重要である.また,連携する業種も多岐に亘るため,情報の提示や伝達能力も求められる.さらに,これらを効率的に行うための情報リテラシー能力も必須である.
     そこで,これらを習得させるため,情報科学,疫学,公衆衛生学,医療情報学の要素を取り込んだ,新しい保健統計学演習のプログラムを作成した.また,この演習を効果的に行うために,マルチメディア機器や情報ネットワークを積極的に活用した.特に,教材のWeb配信を容易にし,オンラインでの学生とのコミュニケーションを向上させるために,Webブラウザ上でWebページの作成・編集を可能とする「Wiki」というシステムを用いて,講義のサーバを構築した.
     この演習を2年間継続して行ったところ,本プログラムによる演習が,保健師教育に有効であることが学生アンケートの結果から示唆されたので報告する.
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