抄録
深部褥瘡の発生は,看護資源の効率的活用の阻害や病院経営への悪影響を及ぼすと考えられる.本研究では,特定機能病院における褥瘡管理について調査した.2007年~2010年の間にA大学病院に入院後,深部褥瘡を形成した患者および,それと同一DPCを有する褥瘡を形成しなかった患者間で比較した.その際に,同一DPCが10例以上ある2つのDPCにおける深部褥瘡患者と非褥瘡患者間の入院収支や看護ケア量への変化を調べた.
その結果,深部褥瘡患者の入院期間は,対象とした2DPCについてそれぞれ2.6倍と7倍に長期化しており,また,収益は,非褥瘡患者の1日当たり収益より,それぞれ8,734円,13,398円減少していた.また,医療材料の消費割合が増加していた.そして,深部褥瘡患者へ提供された1日当たりの看護ケア量は,非褥瘡患者の3倍以上であった.このことより,高度先進医療の提供を重要な使命とする特定機能病院において,深部褥瘡形成が看護マンパワーをはじめとする医療資源の増大を招き,病院の効率的な運用を阻害することを明らかにした.