2018 年 38 巻 5 号 p. 285-293
今や,ビッグデータという言葉を聞かない日がないくらいこの言葉は世の中に溢れ,情報関連の世界で最もホットなトピックスになっている.しかし,その多くは「一見,説得力があるように見えるが,具体性がなく明確な合意や定義のないキーワード」や「何だか凄そうだ(と感じられる)けれど,曖昧でよく分からない」(知恵蔵より)言葉,すなわちバズワードとして語られているようにも思われる.
ビッグデータの簡潔で正確な定義は,悉皆性と網羅性を満たし,統計的有意性やバイアスを気にする必要がない母集団に近いデータということであろう.とは言え,悉皆性や網羅性を厳密な条件とすると,現時点であてはまるデータは,それほど多くないと思われる.とりわけ,医療データではほとんどないと考えられる.
そのため,この企画セッションではビッグデータを,極めて大きなサンプルサイズのデータまたは極めて大きな次元を持つデータ,という少し曖昧な定義で考える.
そのように考えた時,医療に関係したビッグデータとしては,オミックス,医用画像,EMRといったカテゴリーが思い浮かぶ.医療情報学のこれらへの関わり方としては,データの収集・管理の方法,必要なインフラの構築,データの解析などが考えられ,既に多くの医療情報学分野の人が,実際のインフラ構築やデータの管理・抽出といった面で関わっていると思われる.しかしながら,それらは,本来何をどう解析するかが定まらない限り決まらないはずである.解析の方向性を決めるにあたっては,電子化された医療データに最も深く関わっており,そうしたデータの性質を最も良く知っているはずの医療情報学分野の人間がイニシアチブを取るべきではなかろうか.現状は果たしてそうなっているのであろうか.魅力的なデータ解析の分野が広がっているのに,見逃していないだろうか.
このような問題意識に基づき,このセッションではデータ解析の視点から,3つのカテゴリーについて関わりの深い3人の演者にパネラーとして,それぞれのカテゴリーについてその概要と課題について簡単に紹介してもらい,後半ではフロアからの質疑も交えて,現状や3カテゴリー間の関係も考えながら,今後の医療情報学とビッグデータの関わりかたの可能性を考えたい.