日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G1-02
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G1 惑星科学
Ningqiang 隕石のCAI、コンドリュール、マトリックス中におけるネフェリン:その成因に関する考察
*杉田 光弘留岡 和重
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キーワード: CAI, ネフェリン
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抄録
1.はじめに
 Ningqiang隕石は、CV3タイプともCK3タイプとも言われている特異な炭素質コンドライトである。Bulk組成でCa、Alの量は特に少ないわけではないが(0.82×CV平均値)、他のCV3隕石と比べるとCa、Alに富む包有物(CAI)の存在量が非常に少ない[1.0vol% vs 4.8 vol%(CV平均値)]。その理由として:1)Ningqiang隕石にはもともとCAIが少なかった、あるいは2)CAIは普通に存在したが、変成作用によって一部が消失した、という2つの可能性が考えられる。これまでの我々の研究によって、NingqiangのほとんどのCAIに、通常CAIには見られないnephelineが含まれていることがわかっており、上記 2)の可能性が示唆された。 NephelineはCV3隕石やCO3隕石のCAIにも含まれていることが知られている。Naに富むnephelineは、CAIの初生鉱物に比べ、凝縮温度がはるかに低いため、その成因は論争の対象になってきた。今回新たなNingqiang試料を加え,合計16個のCAI(径100-700 μm)を見いだした。それらのCAI、さらにコンドリュール、マトリックスを光学顕微鏡、走査電子顕微鏡、EPMAを用いて詳しく調べ、nephelineの存在形態、そして、その成因を探った。
2.結果
 Meliliteを含むCAIのほとんどは、meliliteが細粒化すると同時に一部がnephelineに交代されている。コンドリュールにも、そのmesostasisがnephelineに交代されているものが存在する。また、マトリックスには、hibonite、fassaite、ilmeniteを含むCAIの破片(径35-80μm)と思われるものや、fassaiteなどのCAIに通常見られる鉱物やnephelineが単独の粒子(2-5μm)で分布している。 Broad-beamによる EPMA分析の結果、NingqiangマトリックスはCV3隕石と比べ、Na、Alに富んでいることがわかった[Na:1.2wt%、Al:4.1wt% vs Na:0.37wt%、Al:2.0wt%(CV平均値)]。X線元素マッピングを行ったところ、マトリックス中にNa、Alは広範に分布しており、両者の分布に強い相関が見られた。これらの結果から、マトリックス中のNa、Alの相関はnephelineの分布に対応していることは明らかである。つまり、マトリックスには広い範囲にnepheline粒子が高密度で分布している。
3.考察
 CO3隕石の場合、熱変成度が高くなるほど、CAI中のnephelineの量が増えていることが知られている。しかし、熱変成とマトリクス中のNa量に相関があるということはない。このことから、変成により生じたnephelineが熱の影響によりマトリックス中に拡散していく、というプロセスは考えにくい。 一方、Ningqiang隕石のマトリックスでは、nephelineがCAIの破片と思われるものとともに広く分布している。これらの結果から、Ningqiang隕石のCAIは隕石母天体に集積した後、以下のような過程を経たと考えられる:(1) 母天体において強い変成作用を受け細粒化し、大部分がnephelineに交代された。(2) その後、角れき岩化作用により一部粉砕され、現在のマトリックス粒子(大部分はFeに富むolivine)と混合した。そのため、現存するCAIの量は少なくなったと思われる。
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© 2003 日本鉱物科学会
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