日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G6-14
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G6:深成岩及び変成岩
Sri Lanka南西部Galle周辺に産するcalc-silicate rockの高度変成作用
*辻本 真治草地 功小山内 康人
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抄録
Sri Lankaの大部分の基盤は先カンブリア代の高度変成岩によって構成されている。これらの基盤岩は、Hiroi et al., (1990), Kroner et al., (1991)などにより、Nd放射年代の違いに基づいてWanni Complex, Kadugannawa Complex, Highland ComplexおよびVijayan Complexの各地質ユニットに区分されている。Sri Lanka南西部Galle周辺のGintotaには、Highland Complexに属するgarnet-orthopyroxene charnockite中にcalc-silicate rockが挟存している。このcalc-silicate rockは層状構造をなしており、大部分のものは主に単斜輝石(Cpx)、スカポライト(Scp)に富む層から構成されているが、その他に主にScp、アルカリ長石(Afs)に富む層、珪灰石(Wo)に富む層なども見られる。このcalc-silicate rockはカルシウムに富む堆積岩を起源としたものと考えられ、これが広域変成作用を受けることによって上述のような構成鉱物の集合体に変化したものと考えられる。この変成鉱物の生成後に、ケイ素に富む熱水がcalc-silicate rockの層状構造とは不調和に浸入し、特徴的に板状のWoからなる幅約50cmの脈が形成されている。また、Wo脈に近接したcalc-silicate rock中には、粗粒のCpx、Wo、Scpが局所的に形成されている。本産地に産する主な鉱物はCpx、Scp、Wo、Afs以外に、斜長石(Pl)、方解石(Cal)、石英(Qtz)、チタナイト(Spn)、燐灰石、石墨、磁硫鉄鉱などがある。本研究では、Galle周辺のGintotaに産するcalc-silicate鉱物の産状および鉱物学的性質を報告すると共に、これらのcalc-silicate鉱物の成因について考察する。 主な鉱物記載:Cpxは自形から他形で、最大15cmに達する結晶として産する。肉眼的には暗緑色を呈する。EDSによる化学分析から求めたXMgは0.53-0.60である。粉末X線回折値から求めた格子定数はa=9.767(8)、b=8.957(4)、c=5.258(4) Å、β=105.58(4)°である。Woは脈状、およびcalc-silicate rock中に層状として産し、肉眼的に白色_から_淡黄色である。脈状に産するものは長さ15cmに達する板状結晶を示す。粉末X線回折値から求めた格子定数は単斜晶系で,a=15.409(4)、b=7.311(3)、c=7.066(2) Å、β=95.36(2)°である。Scpはcalc-silicate rock中の全ての層に共通して見られる。半自形から他形の灰色結晶集合体として産し、鏡下では無色である。化学分析の結果では結晶の中心部と周縁部での組成変化は見られず全体的に均質な組成を示し、メイオナイト成分は0.72-0.87mol%である。粉末X線回折値から求めた格子定数はa=12.165(3)、c=7.567(3) Åである。Afsもcalc-silicate rock中の全ての層に産する。また,Wo脈の周辺には部分的に最大径20cmのメルトポットとしても存在する。化学組成はOr85-100である。成因: THERMOCALC v. 3.2 (Powell and Holland, 1988)と熱力学データセット(Holland and Powell, 2002)を使用して、アクティビティーを補正した部分的な岩石グリッドを作成した。それによりCASV システムでモデル化し、Scp、Woなどのcalc-silicate鉱物の成因および変成経路を推定した。その結果、変成作用時のピークの温度条件は、ScpがCpx、Afs、Spnと平衡に存在していることから800°C以上であると推定された。また、初生グロシュラーが存在しないことから、aCO2は約0.2から0.5であったと考えられる。初生的にScp、Woが生成された後の温度の低下に伴って、ScpはPlとQtzに,WoはQtzとCalに後退変質している。これらの後退反応に加え、WoとPlからScpとQtzへの反応も見られる。これらの後退反応組織であるシンプレクタイトはCO2の供給を受けることによって約0.5以上の高いaCO2条件下で形成されたものと考えられる。
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© 2003 日本鉱物科学会
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