抄録
北部フォッサマグナ地域の西頚城隆起帯には高妻山,雨飾山, 火打山,鉾ケ岳や南葉山などの半深成岩類が分布する(林, 1997; 大場・林, 1998; 八幡・大場,2000,佐藤・大場2002; 遠藤・大場,2002). これらの半深成岩類は鮮新世・更新世前期に活動したとした.本発表では西頚城隆起帯の貫入岩の貫入時期と岩石化学的観点から検討する。 西頚城隆起帯の貫入岩類は有色鉱物の斑晶組み合わせによって3つの岩相に分ることができる. 1つは斑晶に単斜輝石, 斜方輝石を含くむ角閃石ひん岩,2つめは斜方輝石を含くむが単斜輝石を含まない角閃石ひん岩, 3つめは有色鉱物が角閃石のみからなる角閃石ひん岩や石英角閃石ハン岩(または流紋岩)である.単斜輝石・斜方輝石・角閃石ひん岩は南葉山に見られるが, 他の地域では鉾ケ岳でわずかにみられるのみである. 他の地域では斜方輝石角閃石ひん岩や角閃石ひん岩や石英角閃石ハン岩(または流紋岩)からなる. 大場・林(1998, 2000)が報告した南葉山周辺における角閃石ひん岩のK-Ar年代:4.9Ma∼3.08 Mであった.同じような一方,鉾ヶ岳や高妻山のK-Ar年代測定値は1.5±∼1.0±0.4Ma,雨飾山山頂ドームを形成する角閃石ひん岩のK-Ar年代測定値は1.60±0.18 Maを示し,火打山は1.0Ma∼2.0Maでこれらの活動は比較的若く鮮新世後期から更新世前期に活動した. これらの岩石の化学組成をMFA図,SiO2-アルカリ図, SiO2-K2 O図, ハーカー図などにより検討を行った.南葉山周辺の迸入岩体のSiO2は54∼62%と低めであるが, 高妻山,雨飾山, 火打山,鉾ケ岳のSiO2は60∼70%と高めである. K2Oは南葉山が高く,鉾ヶ岳が低い,高妻山,雨飾山, 火打山はその中間のところにプロットされる.南葉山の一部を除いてほどんどの西頚城半深成岩はカルク・アルカリ岩にプロットされる. また貫入岩体類の鉱物の化学組成について, 斜長石はAn85からAn25までの組成範囲をもつ. 単斜輝石のMg/Mg+Fe比は0.67∼0.74で斜方輝石のMg/Mg+Fe比は0.63∼0.59であった. 南葉山ひん岩中の黒雲母のMg/Mg+Fe比は0.43∼0.50であり, ほかのひん岩中には見られない.鉾ヶ岳や南葉山の角閃石の化学組成はコアからリムに向かいパーガス閃石から普通角閃石に変化している.