日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: C-20
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C:岩石・鉱物・鉱床学一般
花崗岩中の石英に見られるヒールドクラックとカソードルミネッセンンス
*関根 孝太郎Bignall Greg土屋 範芳
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抄録
カソードルミネッセンス(CL)は,電子線の照射によって鉱物が発光する現象である.その発光挙動は鉱物中に含まれる微量元素,構造欠陥構造を反映することが知られており,様々な地質的現象の解明に有効な手法である.本研究では,火成岩中の石英についてSEM-CL,SIMS,EPMA,TEMといった微量元素・微量構造分析手法ならびに流体包有物分析を通じて,微小き裂の特徴付けを行い石英中に記録された岩石の変形・破壊挙動について評価することを試みた.分析に用いたサンプルは北アルプス穂高連峰中軸に位置する滝谷花崗閃緑岩体より産する中-細粒の花崗閃緑岩である.両面を鏡面上に成形した厚さ100mm程度の岩石薄片を作成し,流体包有物,SEM-CL,SIMS,EDX分析試料に供した.またTEM試料はイオンミリング法によって作成した.滝谷花崗閃緑岩体における流体包有物の均質化温度は主に200-400℃に分布し,400-500℃の範囲において包有物に乏しい.また600℃付近においては40wt%程度の高塩濃度流体を捕獲していた.200-400℃の比較的低温部に存在する包有物の塩濃度は0-60wt%の広域に分布している.石英のCL像では,結晶成長帯や溶解・再結晶,破壊,き裂面の癒着などが明瞭に観察できる.結晶成長帯はほぼ自形を示し,一部,溶解によってやや丸みをおびたものが見られた.流体包有物を含むヒールドクラックは,周辺部の石英に比べ著しく発光強度が低く,線状の構造を形成している.次に,ヒールドクラックに対応するハローに対して,EDXおよびSIMS分析により組成分析を行った.その結果,EDXでは,一部のハロー部分において著しいアルミニウムの濃集が見られた.またSIMSではハローにおいてナトリウムやカリウム,マグネシウムといった元素が高濃度に含有されていることがわかった.以上の結果により,滝谷岩体の変形・き裂発達史を考察した.CL像の特徴から,石英は晶出および再溶解を繰り返しながら鉱物間を充填するように結晶化した.その後にき裂が発生し,流体が流入することによって流体包有物が捕獲された.捕獲された流体包有物の均質化温度から,き裂が発達し始めた温度は400℃付近と推定できる.また400-500℃付近において包有物に乏しいことから,この温度領域にBrittle-ductile transition zoneが存在し,これより以深ではき裂および流体に乏しい.微小き裂面近傍では,熱水よりナトリウムやカリウムなどの元素が付加され,周囲の部分とは異なる組成を有するヒールドクラックが発達した.また,一部のヒールドクラックのハローに関して,高いアルミニウム含有量が検出されることから,このようなき裂の特徴の差違はき裂形成時期が異なることを示唆していると考えられる.これまで,CL分析は主に熱水性鉱物に応用されてきたが,本研究で示されるように火成岩中の石英に対しても有効な手法の一つであり,その応用が期待される.
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© 2003 日本鉱物科学会
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