日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: C-21
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C:岩石・鉱物・鉱床学一般
甲武信鉱床の地質と含金ガーネットスカルンの産状
*深澤 俊一郎角田 謙朗清水 正明
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抄録
  甲武信鉱床は、南佐久郡川上村梓川西岸に位置するスカルン鉱床である。長野・山梨県境を成す国師ヶ岳(2,592m)の北,梓川に沿った長峰を主峰とする南北の尾根続きに多数の坑口が知られ、武田信玄公の頃より開発され、鉱山の歴史は古い。昭和に再び探鉱が行われたが,その後は休山となっている。
   鉱床付近の地質は,中生代ジュラ紀後期の川上層群をなす砂岩,頁岩,粘板岩,チャートとレンズ状石灰岩を介在している(20万分の1地質図幅「甲府」,2002)。この付近の地層の一般的走向はN50°∼80°Wで,傾斜は60°∼80°Nであるが,レンズ状の石灰岩を含む鉱床付近は走向N50°E,NWに急傾斜する。鉱床南側には甲府花崗岩体が貫入し,この付近の接触部は約2kmにわたり熱変成作用を被っている。また,尾根付近や尾根東側斜面の中腹付近には複数の小規模な石英斑岩岩脈が認められる。鉱床は,北方より梓山鉱床,山神鉱床,国師鉱床の3鉱床に分けられる(日本の鉱床総覧(上),1965)。鉱床付近には2層のチャート層も分布し,北側のチャート層付近では梓山鉱床,山神鉱床が,南側のチャート層付近では国師鉱床が発達している。このうち,梓山鉱床は磁鉄鉱に富み,国師鉱床はザクロ石を主とするスカルン鉱床中に金に富む。
  今回の研究では,主に,泥質∼砂質ホルンフェルスと小規模なレンズ状石灰岩を起源とする大小24のスカルン鉱体からなる国師鉱床について調査を行った。ザクロ石,灰鉄輝石,柱石,磁鉄鉱,氷長石,緑泥石,緑簾石,ベスブ石,石英,方解石,灰重石,燐灰石,磁鉄鉱,金,蒼鉛,Bi-Te系鉱物,磁硫鉄鉱,黄銅鉱,硫砒鉄鉱などが確認された。このうち規模の大きい鉱体は2つで,1つは花崗岩類の接触部より約700m離れたNo.2鉱体,他は約1000m北方の尾根付近にあるNo.9鉱体である。No.2鉱体は,主に磁鉄鉱を産出したザクロ石‐灰鉄輝石スカルン中にあり,延長方向に90m以上伸びた鉱体である。No.9鉱体は,走向N60°W傾斜65°Nのレンズ状部分を東西約30m,南北約50m,厚さ約50mの範囲で開発され,鉱体上盤側に直径10m程度のほぼ円形をした石英斑岩が貫入する。結晶質石灰岩(幅2∼7m),灰鉄輝石帯(幅約3m),ザクロ石帯(幅30m以上)よりなる帯状にスカルン鉱物の配列が認められ,結晶質石灰岩と灰鉄輝石帯の間には幅0.2∼1mの石英細脈が,下盤側のザクロ石帯には石英脈(幅数mm∼1cm)や方解石脈(幅数mm∼20cm)が網目状に走り,方解石脈中には金属鉱物が濃集する部分がしばしば見られる。
  金は,No.9鉱体の下盤側ザクロ石スカルン帯より産出する。金は100μm程度のサイズが多く,緻密なザクロ石スカルン中にザクロ石の粒間に認められ,硫砒鉄鉱,蒼鉛,Bi-Te系鉱物と共生する。現在のところ金の分析結果は,粒子内部は比較的均質で,銀の含有率が約7%と約11%のものが多い。また,方解石に伴われる金も認められる。
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© 2003 日本鉱物科学会
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