抄録
ODP Leg 209では,MAR15。20ユNF付近の海洋底に露出する蛇紋岩化かんらん岩類をターゲットに掘削を行った.本海域は,低速拡大軸の特にマグマ生産量の低い地域であり,玄武岩質地殻を欠き,かつて上部マントル物質であったかんらん岩が直接海洋底に露出していることが知られている. 本航海において、特徴的にダナイト,トロクトライトなどのモホ遷移帯を構成する岩石やガブロなどメルトから集積した岩石が多く採取されたこと,ポディフォーム・クロミタイトが発見されたことから,この地域の上部マントルの部分溶融程度(メルト生成率)は低かった訳ではなく,むしろ大量のメルトが生成されたことが伺える.この結果は,本海域での玄武岩質地殻欠如とは矛盾することから,多量のメルトが生成されたにもかかわらず,上部マントル中で壁岩と反応し,海底に噴出することなく消費されてしまったことを示唆している