日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2004年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G4-01
会議情報

G4:深成岩および変成岩
鉱物の酸素同位体比からみた野田玉川層状マンガン鉱床の変成作用
*林 謙一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
野田玉川鉱床は岩手県北部野田村に位置し,我国有数のマンガン鉱床であった。鉱床は白亜紀田野畑花崗岩体上に8km×12kmのルーフペンダントを成すジュラ系高屋敷層のチャート中に胚胎する。高屋敷層は粘板岩,砂岩,チャート,塩基性凝灰岩などからなり花崗岩による接触変成作用を受けホルンフェルス化している。鉱床はチャート中に整合に胚胎し,米田,ミサゴ,桐畑鉱体等からなるが,これらは同一層準に属し走向NS-N30°E,傾斜60-80°W程度で走向延長は2000mに達する。野田玉川鉱床は貫入花崗岩による熱の影響を受けた変成鉱床であるが,もともとは北部北上帯に広く分布が知られているような層状マンガン鉱床として形成されたと考えられてきた。しかしながら変成作用の影響のため,初生的に形成された含マンガン堆積物の情報をマンガン鉱石から直接求めることはできない。本研究では,鉱石や母岩に含まれる各種鉱物の酸素同位体比を分析し,これら鉱物の起源や変成作用に関する情報を得ることを目的とした。 熱変成を蒙る前の鉱床については推測の域を出ないが,マンガン炭酸塩鉱物とシリカ鉱物を主体とする層状鉱床であったと考えられている。熱変成の結果,各種鉱物が鉱体内で累帯分布をしており,中心部にパイロクロイト-ハウスマン鉱帯,その外側にテフロ石帯,さらに外側にはバラ輝石帯が発達し,バラ輝石帯はチャートを主体とする母岩と接している。マンガン珪酸塩鉱物の酸素同位体比(δ18OSMOW)を測定し,その結果はテフロ石9.9-20.0 ‰(試料数 65),バラ輝石11.7- 20.3 ‰(試料数 32),石英23.0-23.9 ‰(試料数 8)のようである。大まかには同位体比が重い順に石英>バラ輝石>テフロ石となり,この順は3者間の同位体分別から予想される順序と一致する。しかしながら,一ヶ所の切羽から採取したサンプル間でも,各種鉱物の酸素同位体比は一定値とはならず,数‰の変化を示した。さらに,鉱体内で共存する石英-バラ輝石およびバラ輝石-テフロ石の鉱物ペアの酸素同位体比から計算した同位体温度は一定値に落ち着かず,また母岩中の変成鉱物組み合わせから予想される温度とも矛盾する。マンガン鉱床は貫入花崗岩のごく近傍に位置していたと考えられ,仮に変成作用時に花崗岩マグマから多量の流体が供給されたならば,マンガン鉱物間で流体を介した酸素同位体平衡が達成されたはずである。しかしながら,今回の分析データは変成流体を介しての鉱物間の同位体平衡が達成されなかったことを示し,熱変成時の変成流体/岩石比が著しく小さかった事を示唆する。熱変成を受ける前の主要なマンガン鉱物であったと考えられる菱マンガン鉱の酸素同位体比を,マンガン鉱物および変成流体間の酸素同位体に関する質量保存則から計算した。計算値はδ18O = 19.2-23.4 ‰程度となり,この菱マンガン鉱が海水と酸素同位体的に平衡状態で沈殿したとすれば,その時の温度は62° - 111°Cと求まる。従って,野田玉川鉱床の起源となったマンガン堆積物は低温の熱水活動により海洋底に沈殿したものであると考えられる。
著者関連情報
© 2004 日本鉱物科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top