主催: 日本岩石鉱物鉱床学会
高圧変成岩における電気石の挙動は,深部付加プリズムにおける流体-岩石相互作用を解明する上で重要である.演者らは,四国中央部国領川流域の三波川帯において,電気石濃集帯を見出した.本発表では電気石岩の成因および沈み込み帯における地球化学的意義について報告する.本地域の三波川変成岩類は,大生院ナップ,別子ナップに区分される.ナップ境界周辺の泥質片岩中には,多数の蛇紋岩がレンズ状もしくは層状に挟まれる.ナップ境界を境に,構成岩石,斑状変晶の粒径および鉱物化学組成が明瞭に変化する. 泥質片岩に含まれる電気石は,一般に微量かつ細粒である.一方,境界付近の両ナップ中には,多数の電気石濃集層が存在する.規模の大きいものは電気石の巨晶および電気石岩を含む. 電気石濃集層が多産する本調査地域は,沈み込み帯深部で形成されたナップ境界であり,大規模な流体の通路であったと考えられる.