日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2004年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G4 P-10
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G4:深成岩および変成岩
三波川帯東赤石カンラン岩体のカンラン石格子定向配列の変遷
*水上 知行Wallis Simon
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抄録
近年の変形実験によって、カンラン石格子定向配列(LPO)の多様性が、H2O量、差応力など変形の物理条件に依存することが明らかになった。カンラン石LPOの多様性がマントルの物理条件を映すとすれば、天然のLPO変化から変形の場の変化、すなわちテクトニックな環境の変化を読み取ることができるかもしれない。特に岩石の粘性率に強く影響するH2O含有量は、マントルダイナミクスにとって重要な情報である。広域的な露出を持つアルプス型カンラン岩体は、歪の不均質のために古い変形構造を保持している場合が多い。そのため、詳細な観察によって、カンラン石LPOの変遷を読み取る研究が可能である。ここでは四国三波川帯、東赤石カンラン岩体を例として取り上げ、LPOの変化を整理し、物理条件の変化について考察する。 東赤石カンラン岩体はおもにダナイト、ウェルライトから成り、一部にザクロ石カンラン岩を含む層状岩体である。東赤石岩体の変形史は、D1、D2、D3、D4の4つの変形段階からなり、ここでは強いカンラン石LPOを伴うD1変形とD2変形に注目する。 D1の変形構造は、平均粒径0.6mmのカンラン石伸長粒子の形態定向配列によって定義され、ほぼ等粒状の組織を示す。このD1カンラン石は微細包有物をほとんど含まない。D1カンラン石の結晶軸集中は、b軸が面構造(S1)に垂直方向に単一集中を示し、a軸、c軸は面構造内にガードル分布するパターンを示す。a軸は鉱物線構造(L1)に平行方向に弱い軸集中を持つ。このa軸集中はタイプAと呼ばれるパターンに一致する。 D2の変形構造は、細粒ネオブラストと粗粒で微細包有物を多量に含むポーフィロクラストからなるポーフィロクラスティック組織が特徴である。面構造・伸長線構造は平均粒径0.1mmのカンラン石ネオブラストの形態定向配列で定義される。D2カンラン石ネオブラストの結晶軸集中は、b軸が面構造(S2)に垂直方向に集中し、c軸が鉱物線構造(L2)に平行方向に集中するパターンである。a軸が線構造に対して垂直方向を向く点が大きな特徴である。このLPOはタイプBと呼ばれるパターンに一致する。 東赤石岩体のD2変形は、D1粒子を動的再結晶作用によって細粒化させる形で広域的に起こっている。この変形段階の移行によって、タイプAからタイプBへとカンラン石LPOが変化する。任意の温度において、タイプAは低差応力・低含水量の条件で、タイプBは高差応力・高含水量の条件で卓越するLPOパターンである。D2変形(タイプB形成)と同時の(1)等温昇圧の温度圧力変化と、(2)H2Oに富み、差応力の強い物理条件は、沈み込み境界付近の環境を強く示唆する。それに先行するD1は、岩体が沈み込み境界に近づく前の条件を反映しているに違いない。D1変形のカンラン石LPOから推定される、H2Oに乏しく低差応力の環境としては、(1)沈み込み開始前のマントルリソスフェアか、(2)マントルウェッジ内の沈み込み境界から離れた場所、の二つの可能性が考えられる。いずれにしても、東赤石岩体に見られるカンラン石LPO変化は沈み込み帯深部の環境の違いを反映している例として興味深い。
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© 2004 日本鉱物科学会
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