抄録
台湾の地質構造は、日本列島のように複雑ではなく、南北に伸びる3つの地質帯からなる比較的単純なものである。大陸側には、主に中新世から第四紀の浅海性・汽水性の砕屑岩からなるWestern foothill帯がある。この地帯は、ほとんどが大陸から供給された砂や泥からなり、石灰岩や火山岩類は極めて少量である。中央部は、Central Range帯と呼ばれ、さらに2つに細分されている。西部は、弱い変成作用を受けた始新世から中新世の浅海性の砕屑岩からなり、東部は主に白亜紀の変成作用を受けてできた片岩、結晶質石灰岩、片麻岩、蛇紋岩からなる。これらの変成岩の源岩には、二畳紀の岩石も含まれると考えられている。太平洋側(Eastern Coastal Range)は、中新世以後の深海性の砕屑物と火山岩類からなる。 台湾の地質の大部分は、砂岩や泥岩などの砕屑岩からなり、台湾の形成史を調べるには砕屑物がどのような場所から供給されたかを調べることが重要である。Western foothill帯は、Central Range帯と断層で境され、両者には中新世の砂岩が広く分布している。これらの2つの地帯は、現在の場所で形成されたかどうか多くの議論がなされてきたが、砕屑岩の供給源を調べることにより、堆積場の違いがわかるものと思われる。本研究では、これらの地帯の砂岩に関して、鉱物の種類の特定とモナザイトの年代を測定して、供給源を調べた。 Western foothill帯の中新世から鮮新世の砂岩は、ほとんどが石英質で、大陸起源のものと考えられる。重鉱物には、緑簾石、チタナイト、ザクロ石やジルコンなどが多く含まれるが、年代により溶解が進み、中新世の砂岩では、ザクロ石、モナザイトやジルコンなど限られた鉱物だけが残存している。モナザイトの年代測定は、約1900 Maの成分が多いものと少ないものとの、2つのグループに分類される。これらの年代分布の違いは、供給源の違いを示すものであり、現在平行して研究されている中国の河川の砂岩との対比から供給源が特定されるものと考えている。少なくとも1900 Maのモナザイトを多く含むものは、揚子江の砂とほぼ同じ年代分布を示している。Western foothill帯の鮮新世から第四紀の砂岩は、Central Range帯の上昇により現在の台湾中央部から供給されたことが砂岩や礫の研究から明らかにされている。今回の分析データもこれを裏付けるものが得られた。 Central Range帯の多くの砂岩は、ほとんどが石英からなるが、砕屑性重鉱物は溶解していると同時に弱変成作用を受けているため、ジルコン以外の砕屑性鉱物は極めて少ない。この地帯のモナザイトは、ほとんどの砂岩でトリウムの少ないモナザイトに分解している。年代測定されたモナザイトは、粒の中心部に残されたところから得られた年代が多い。この地帯のモナザイトの年代分布には、200 Ma前後のものが多く見られ、Western foothill帯とは明らかに異なっている。Central Range帯の砂の供給源に関しては、流痕から現在の福建省付近から供給されたと考えられているが、今回の分析データと福建省の河川のデータを比較することにより開明されるものと考えられる。