抄録
関東地震(1923年)の震源断層は千葉県房総半島から神奈川県西部にいたるフィリピン海プレートと本州側プレートの境界断層であると考えられている。今回,震源データによる震源分布から,伊豆衝突帯の地震発生帯の形状を検討し、伊豆衝突帯におけるフィリピン海スラブの岩石学的構造モデルを提案する。
1999/01/01から2001/12/31の3年間の気象庁一元化震源データから3次元震源分布図を作成し,あらゆる方向から伊豆衝突帯における地震発生面の形状を検討した結果,地震発生面の深度分布は丹沢山地の中部付近を境に東側と西側で異なっており、丹沢山地直下では西部の方が数_から_5kmほど深いことが明らかになった。これを伊豆弧地殻構造や丹沢変成岩類のテクトニクスと関連して解釈すると,山梨県東部まで緩傾斜で沈み込んでいる伊豆弧下部地殻(フィリピン海スラブの最上部層)が南北方向に断裂しており,西側のスラブが東側のスラブより深く位置していることになる。
フィリピン海スラブのスラブ断裂の位置はちょうど推定された関東地震(1923年)の震源断層の西端であり,関東地震の震源断層の形状を規制している。また,このスラブ断裂構造の真上の丹沢山地中央部の河内川沿いには南北方向の大規模リニアメントが、また、その延長上に伊豆半島を南北方向に走る丹那断層が位置しており,このスラブ断裂構造に関係して形成したのではないかと推定される。
今回伊豆衝突帯におけるのプレート境界形態の複雑さが明らかになったが,今後の地震防災などで役立つことを期待する。