抄録
南インドMadurai block,Paramathiには,厚さ数cmのクロマイトに富むレイヤーを含み,サフィリン,スピネル,コランダムを含む層状片麻岩が産する.肉眼的には,角閃石に富むレイヤーとクロマイトレイヤーであるが,角閃石とスピネルの化学組成から化学的には3つのドメインに識別でき,その境界部は変成作用時に化学的な相互作用が起きた部分である.角閃石に富むレイヤー中にはコランダムをコアに持ち,スピネルやサフィリンに取り囲まれた反応組織が見られ,コランダムとツェルマーク角閃石の境界部でスピネル形成反応が起こりAlポテンシャルの高いコランダム側にスピネルが,Caポテンシャルが高い角閃石側に斜長石が形成した.その際SiO2は過剰となるが,SiO2ポテンシャルが高まった部分とスピネルとが反応しサフィリンが形成した.この層状片麻岩の形成は原岩構造とその後の変成作用における化学ポテンシャル勾配や,その緩和による元素挙動が支配的であったと言える.