医学検査
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症例報告
飼い犬との濃厚な接触が発症の原因と考えられたPasteurella multocidaによる市中肺炎の1例
柳井 さや佳森本 瞳吉永 詩織長崎 由佳Shah Mohammed MONIR中岡 大士中間 貴弘石田 正之
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2014 年 63 巻 2 号 p. 197-203

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抄録

86歳男性に発症したPasteurella multocidaによる肺炎の症例.肥大型心筋症,膀胱癌術後のホルモン療法のため当院外来で加療中であった.
今回入院4日前より湿性咳嗽と夜間喘鳴が出現し,定期外来受診時に肺炎を指摘された.Sulbactam/Ampicillin(SBT/ABPC)による加療が開始されていが,喀痰のグラム染色で小型のグラム陰性球桿菌を認めたため,Haemophilus属を疑いCeftriaxone(CTRX)へ変更した.その後肺炎は速やかに改善し,第8病日に退院となった.なお,グラム染色で認められた菌体は培養でP. multocidaと同定され,飼い犬との濃厚な接触がある事から,同菌による肺炎と診断した.
Pasteurella属は,グラム染色所見がHaemophilus属と類似しており判別が困難な場合があるが,問診をしっかり取ることでPastreurella属を鑑別にあげることができる.
パスツレラ感染症は,動物からの咬傷による創傷感染だけではない.現在では,ペットとの濃厚な接触機会が増加していることが原因と考えられる呼吸器感染症の報告例も増加しており,本症例もその1例である.

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© 2014 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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