医学検査
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63 巻, 2 号
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原著
  • 征矢 佳輔, 新井 慎平, 竹澤 由夏, 菅野 光俊, 寺澤 文子, 奥村 伸生
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    今回我々はフィブリノゲン(Fbg)γ鎖308番アスパラギン(Asn)がリジン(Lys)に置換した3家系5名のヘテロ変異患者を発見・同定し,患者居住地より,Matsumoto II,Matsumoto XI,Nagano Iと命名した.それぞれの患者血漿からFbgを精製して機能解析を行ったところ,患者Fbgの重合機能はCaイオン非存在下で健常人Fbgに比べ著明に低下しており,患者間で低下の程度に差が認められた.また,Caイオン存在下では患者Fbgの重合機能は大きく改善された.一方で,Single Nucleotide Polymorphism解析の結果から,3家系の変異遺伝子は同一の突然変異に由来する可能性が高いことが示唆され,SDS-PAGEの結果では患者間で正常γ鎖と異常γ鎖の量の差に大きな差は認められなかった.以上のことから同一の変異を有する患者でも,Fbgが肝細胞で二量体として合成される際になんらかの選択機構が働き,正常/異常二量体Fbgの合成量が増加することで,完全な機能を有する正常/正常二量体Fbgの存在比が減り,重合機能がより不良になると推測した.
  • 宮花 礼子, 川﨑 俊博, 前田 久美子, 上原 久美子, 兵頭 永一, 田口 晴之, 島田 健永, 吉川 純一
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    目的:運動負荷心エコー図検査は,心筋虚血評価検査の中でも感度・特異度が高く,治療方針を決定する上で有用性が高い.また,平成24年度の診療報酬改定により保険収載項目となり,今後更なる発展が予想される.しかし検査が煩雑で,検査に要する人員が複数名必要なことや検者の熟練度が検査結果に大きく左右するなどの理由から,本邦ではあまり普及していないのが現状である.今回我々は,ワイヤレス12誘導心電計を用いることにより,検査に要する人員数,検査時間を軽減できるか検討した.
    対象と方法:狭心症の診断にて運動負荷心エコー図検査を施行した連続31例(男性24例,平均年齢66 ± 11歳)を対象とした.検者2名でワイヤレス12誘導心電計を使用した方法をワイヤレス法,従来法である検者3名で有線の12誘導心電計を使用した方法を有線法A,ワイヤレス法と検者数を合わせ,検者2名で有線の12誘導心電計を使用した方法を有線法Bとし検査を施行した.それぞれの方法で運動終了時から1枚目の画像取得までの時間を測定し比較検討した.
    結果:ワイヤレス法:12例(男性10例,平均年齢67 ± 8歳),有線法A:12例(男性9例,平均年齢64 ± 14歳),有線法B:7例(男性5例,平均年齢68 ± 12歳)の全てにおいて安全に検査が施行できた.画像取得時間は,ワイヤレス法では19 ± 3秒,有線法Aでは18 ± 4秒で両者に差はなく,従来法より1名少ない検者数でも安全かつ正確に検査が施行できた.しかし,有線法Bの画像取得時間は31 ± 9秒であり,他2法に比べ有意に長い結果となった.
    結論:ワイヤレス12誘導心電計は検者の負担を軽くし,運動負荷心エコー図検査が簡便に行える可能性が示唆された.今後,広く使用できうる機器であると考えられた.
  • 野村 秀和, 鎌倉 明美, 棚村 一彦, 伊藤 愛美, 赤津 義文, 大塚 喜人
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 146-153
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    2007年度,2009年度,2011年度の3期間に中規模施設4病院において尿,血液由来から分離されたESBL産生腸内細菌4菌種について分離率を調査した.ESBL分離株数の推移については,両材料で外来,入院ともに年度を追うごとに増加していた.ESBL産生菌種別分離比率は,Proteus mirabilisが最も多く,次いでEscherichia coliKlebsiella oxytocaKlebsiella pneumoniaeの順であった.特に入院由来でのESBL分離率に施設間差が認められた.リスクファクター患者における入院時の積極的な糞便のアクティブサーベイランスを行うことが院内感染対策上有用であると思われた.
  • 小島 祐毅, 山岸 宏江, 説田 政樹, 佐藤 幸恵, 前岡 悦子, 二坂 好美, 山田 雄一郎, 湯浅 典博
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    目的:鼠径部腫瘤に対する超音波検査の意義を明らかにする.
    対象と方法:対象は2010年6月から2012年5月の間に鼠径部腫瘤に対して超音波検査を実施した215人である.検査件数の経時的変化,超音波診断,触診による診断との比較,内・外・大腿ヘルニアの正診率について検討した.
    結果:検査件数は検査導入から徐々に増加し,月平均17件となった.超音波診断は鼠径ヘルニアが84%と最多で,以下精索(Nuck管)水腫,リンパ節,子宮円索静脈瘤,異所性子宮内膜症などであった.13例(6%)において触診による診断が超音波検査により変更された.手術所見により確定診断が得られた153例において超音波診断との比較を行うと,鼠径ヘルニア分類の正診率は82%であった.
    結論:鼠径部腫瘤に超音波検査を行うことは診断・治療に有用である.
  • 相川 修一, 石倉 はる美, 吉川 康弘, 栗原 惣一, 福山 光和, 松本 繁子, 大塚 喜人
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    全自動蛍光免疫測定装置ミュータスワコーi30(和光純薬(株))を用いて肝細胞癌の腫瘍マーカーであるAFP,AFP-L3%,PIVKA IIの基礎的検討と臨床的検討を行ったので報告する.AFP,AFP-L3%,PIVKA II測定の基礎的検討は良好であり,AFP単独測定に比べAFP-L3%およびPIVKA IIを同時に測定することにより,肝細胞癌に対する有病正診率と無病正診率の上昇が認められた.以上の結果から全自動蛍光免疫測定装置ミュータスワコーi30を用いたAFP-L3%,PIVKA IIの同時測定は肝細胞癌診断補助に有用であった.
  • 藤岡 美幸, 大友 良光, 月足 正辰
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 168-172
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    食品媒介感染症であるCampylobacter jejuniおよびC. coliは馬尿酸塩加水分解試験により鑑別することができる.この方法は特別な機材や試薬を必要とせず,2時間強で結果が得られるため,医療施設での迅速簡易試験として有用である.しかし試験の判定は反応液の色を目視で判定し,濃紫色を陽性,薄紫色~無色を陰性とする.また使用菌量も漠然としており具体的ではなく,施設や実施者によって判定に相違が生じる可能性があった.そこでPCRにより遺伝子検索済みの下痢症患者由来C. jejuni 72株,C. coli 28株を対象として,馬尿酸塩加水分解試験に用いる接種菌濃度別の検査結果について検討した.使用菌量はMcFarland No. 0.5~5とし,試験反応液を540 nmにて吸光度測定した.その結果,接種菌量不足では偽陰性を,また過度な接種菌量では偽陽性を呈する可能性が示唆された.これらの検討結果より,McFarland No. 2の菌液を用いることで最小限の接種菌量でなおかつ偽陰性を見逃すことなく目視判定が可能となった.
  • 石田 悠梨, 石塚 敏, 安尾 美年子, 三浦 ひとみ, 岩藤 和宏, 中島 一朗, 渕之上 昌平
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 173-180
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,354症例の腎臓移植患者について原因疾患であったIgA腎症Immunoglobulin A nephropathy(IgAN),インスリン非依存型糖尿病non-insulin-dependent diabetes mellitus(NIDDM)および腎生検を施行していない慢性糸球体腎炎chronic glomerulo nephritis(CGN)の3群について HLAアリル頻度との関係を検討した.
    HLA対立遺伝子は,Polymerase Chain Reaction - reverse sequence specific oligonucleotide(PCR-rSSO)法にてHLA-A, B, DRB1遺伝子型を測定した.
    IgAN群のDRB1*04:05頻度は,ドナーのコントロール群と比較して(23.611%1 vs. 15.395%,odd sratio(OR)=1.699,95%confidence interval(CI): 0.404–0.856,p=0.010)HLAアリル頻度が高かった.
    NIDDN群のDRB1*04:05頻度は,ドナーのコントロール群と比較して(9.615% vs.15.395%,OR=0.585,95% CI : 1.033–2.831,p=0.040)HLAアリル頻度が低かった.
    CGN群のDRB1*04:05頻度は,ドナーのコントロール群と比較して(22.1873% vs.15.395%,OR=0.638,95% CI : 1.107–2.215,p=0.010)HLAアリル頻度が高かった.
    本研究において解析結果から慢性腎不全患者のHLAアリル頻度と原因疾患との関連性が示唆された.
  • 土田 秀, 神山 晴美, 布瀬川 卓也, 寺田 美保, 新井 美紀, 飯田 麻美, 富岡 千鶴子, 竹内 浩司
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌の放射線治療後では,膣の乾燥などに伴い細胞診標本が乾燥することがある.子宮頸癌に対し放射線治療が行われた12例を対象に,通常のアルコール固定標本と乾燥再水和処理を施した後に固定を行った標本を作成して細胞所見などの比較を行った.通常固定標本の4例で標本中の約半数の細胞が,1例で75%以上の細胞が乾燥していたが,再水和処理を施した全ての標本で75%以上の細胞が良好に観察され,乾燥再水和処理法を用いた細胞診標本の有用性が確認された.
  • 鈴木 優治
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    スルホサリチル酸法は尿蛋白質を測定するために用いられる.この濁度法における濁度/沈殿蛋白質濃度比とpHとの関係について検討した.この比は反応溶液pHが上昇するとともに減少した.この結果は,スルホサリチル酸により沈殿された粒子径がpHの上昇とともに小さくなることと,尿pHが濁度の生成に影響を与え,測定値にばらつきをもたらすことを示している.
症例報告
  • 土手内 靖, 尾﨑 牧子, 杉原 崇大, 西山 記子, 谷松 智子, 西山 政孝
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    患者は急性骨髄性白血病と診断された22歳女性.入院時,血液型検査において試験管法,カラム凝集法ともに,抗Aに対し,部分凝集を示した.A型転移酵素活性の低下は認めなかった.
    寛解導入療法開始後,A抗原の減弱が進行し,入院11日目にA抗原が消失し,赤血球製剤を同日2単位輸血した.14日目にはA抗原が(4+)256倍に回復した.さらに,本例ではA抗原減弱期に一致して,冷蔵保管においてもA抗原の減弱を認めた.しかし,A抗原が回復した以降は減弱を認めなかった.
    白血病におけるABO抗原の減弱の原因は明らかにされていないが,本例ではA抗原減弱期に一致して,冷蔵保管による減弱を認めたことから,A抗原の減弱にはA抗原の脆弱性が関係していると考えられた.
  • 柳井 さや佳, 森本 瞳, 吉永 詩織, 長崎 由佳, Shah Mohammed MONIR, 中岡 大士, 中間 貴弘, 石田 正之
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    86歳男性に発症したPasteurella multocidaによる肺炎の症例.肥大型心筋症,膀胱癌術後のホルモン療法のため当院外来で加療中であった.
    今回入院4日前より湿性咳嗽と夜間喘鳴が出現し,定期外来受診時に肺炎を指摘された.Sulbactam/Ampicillin(SBT/ABPC)による加療が開始されていが,喀痰のグラム染色で小型のグラム陰性球桿菌を認めたため,Haemophilus属を疑いCeftriaxone(CTRX)へ変更した.その後肺炎は速やかに改善し,第8病日に退院となった.なお,グラム染色で認められた菌体は培養でP. multocidaと同定され,飼い犬との濃厚な接触がある事から,同菌による肺炎と診断した.
    Pasteurella属は,グラム染色所見がHaemophilus属と類似しており判別が困難な場合があるが,問診をしっかり取ることでPastreurella属を鑑別にあげることができる.
    パスツレラ感染症は,動物からの咬傷による創傷感染だけではない.現在では,ペットとの濃厚な接触機会が増加していることが原因と考えられる呼吸器感染症の報告例も増加しており,本症例もその1例である.
  • 板橋 匠美, 渕本 芳行, 石黒 泉
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    細胞診,画像所見を踏まえて手術に至った下部胆管狭窄を来した自己免疫性膵炎(以下,AIP)の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.54歳男性,近医で黄疸を指摘され当院紹介となる.血液検査で高ビリルビン血症,胆道系酵素上昇,造影CT検査にて肝内および肝外胆管の著明な拡張を認め,閉塞性黄疸の診断にて精査加療目的に入院となった.入院時血液検査でCEA,CA19-9腫瘍マーカー高値を示し,磁気共鳴胆道膵管造影および腹部超音波検査を施行し下部総胆管腫瘍による閉塞性黄疸と診断,貯留胆汁細胞診では疑陽性となり膵頭十二指腸切除術が施行された.細胞診所見は腫瘍性病変を疑う重積性を示す乳頭状集塊を認めた.肉眼的所見では膵内に結節性病変は認めず,組織像はLymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)and cholangitisに相当するものであった.また形質細胞は50ヶ程度/HPFにIgG4陽性を認め,総合的に判断しIgG4関連硬化性胆管炎を伴う自己免疫性膵炎(IgG4関連AIP-SC)と診断された.自己免疫性膵炎はステロイドが奏功する炎症性疾患であり,現時点では悪性腫瘍発症の危険因子となるかは明らかでなく手術の必要はない.細胞学的特徴においては基準がなく,今後症例を集め,胆汁に出現する細胞の特徴を探る必要がある.
  • 鈴木 駿輔, 平松 直樹, 西川 伸一, 横地 常広, 竹内 泰代, 田中 悦子, 島田 俊夫
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 2 号 p. 210-215
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性,2013年5月より起床後の労作時息切れと胸部絞扼感を自覚.日中は症状なく,1時間程度の散歩も難なく可能であるが,起床時の症状は継続しているため心機能精査目的で当院紹介受診.既往歴は高血圧(治療中),家族歴は父母高血圧でその他特記すべきことなし.安静時心電図,心臓超音波検査では異常を認めなかったが,トレッドミル負荷試験(Bruce protocol)開始5分(6.9METS)で胸部不快感を訴え,前胸部誘導V1–V4のST上昇を認めた.ニトログリセリンの舌下投与により胸部痛は改善傾向であり,負荷終了にてSTは基線に戻った.翌日,冠動脈造影検査を施行.左前下行枝#6の50%狭窄を認めたが,左右冠動脈に有意狭窄は認めなかった.引き続き右冠動脈に対してエルゴノミン負荷を行ったところ,#2に冠動脈攣縮が誘発され,運動誘発性冠攣縮狭心症と診断された.冠攣縮性狭心症の多くは,血管内皮が傷害されている状態で,早朝(安静時)突然に交感神経が刺激されることによって冠攣縮が起こりやすいと考えられている.今回経験した運動誘発性冠攣縮狭心症は日常労作や運動試験により冠攣縮が誘発され心筋虚血が生じる病態であり,器質的狭窄のない冠攣縮性狭心症症例の約40%前後に労作による誘発が認められるとされている.以上,運動負荷にて冠攣縮狭心症が誘発された1例を経験したので報告する.
  • 山田 明輝, 橋倉 悠輝, 武田 展幸, 佐伯 裕二, 梅木 一美, 天野 正宏, 瀬戸山 充, 岡山 昭彦
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    Trichophyton tonsuransは白癬を引き起こす皮膚糸状菌の一種であり,本邦でも2000年以降に柔道やレスリング等の格闘技の選手に確認されている.今回我々は,柔道教室に通う8歳男児の頭部膿瘍から皮膚糸状菌を分離し,スライドカルチャーによる形態学的特徴からTrichophyton属と判定した.種を同定するため,リボゾームRNAをコードするITS領域とD1/D2領域をPCRで増幅し,その塩基配列を調べた.得られた塩基配列をDNAデータベース(DDBJ)で検索した結果,2つの領域とも最も高い相同性を示したT. tonsuransと同定した.遺伝子解析による真菌等の種の同定方法として,異なる領域から得られる相同性の結果を相互に確認する手順を加えることで,より信頼性の高い種の同定が行えることが示唆され,適切な抗菌薬の選択や治療に寄与できるものと考えられた.
技術論文
  • 矢野 美由紀, 直本 拓己, 大沼 健一郎, 楠木 まり, 林 伸英, 木下 承晧, 大路 剛, 河野 誠司
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    専用機器による自動判定キット1種類を含めた判定ラインの発色原理が異なる4社5種類のインフルエンザ迅速診断キットについて,感度及び判定者間での判定結果のばらつきについて検討した.目視判定キット間では感度に有意な差はなく,銀増幅反応を利用した自動判定キットは他の目視判定キット4種類に比べ有意に高い感度を示した.目視判定キットはいずれのキットにおいても検出下限で判定者間の判定結果に不一致が認められた.自動判定キットは専用機器が必要であり,1検体毎に機器を用いて測定するため,複数検体を同時に処理する事はできないが,目視判定キットに比べ感度及び客観性に優れており,有用である.
  • 松浦 香里, 馬場 尚志, 麻生 都, 森田 恵美, 金谷 和美, 河村 佳江, 飯沼 由嗣
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 2 号 p. 226-231
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    多剤耐性緑膿菌は,病院感染対策上最も重要な病原体の1つであり,確実な感染対策を行うためにも,迅速かつ効果的なスクリーニング法が求められている.今回我々は,臨床分離株のうちimipenem,ciprofloxacin,amikacinのいずれか1つ以上に耐性を示した緑膿菌31株と,同様の耐性を持つ他のグラム陰性桿菌30株を用い,クロモアガーMDRPスクリーン培地(MDRP培地)の有用性に関する基礎的検討を行った.結果は,緑膿菌では多剤耐性菌以外の株でも一部に発育が見られたものの,多剤耐性緑膿菌8株全てで青緑色のコロニー形成を認めた.一方,他の菌種は高度耐性株を含め多くの株で発育が抑制され,発育を認めた場合でもコロニーの色調から容易に緑膿菌との違いが判別できた.この結果から,最終的な判定には薬剤感受性検査の実施が不可欠であるものの,MDRP培地が多剤耐性緑膿菌のスクリーニング培地として高い有用性を持つ可能性が示唆された.
  • 染野 智治, 戸枝 義博
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 2 号 p. 232-235
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    CK-MB蛋白量を汎用自動分析装置で測定可能なラテックス比濁法測定試薬の基礎性能及びCK-MB活性測定試薬,ミトコンドリアCK阻害試薬,免疫専用CK-MB蛋白定量試薬(CLIA法)との比較をおこなった.「LタイプワコーCK-MB mass」試薬の再現性,直線性の基礎性能は良好であった.CK-MB活性測定試薬においてCK-アノマリーの影響があった.しかしミトコンドリアCK阻害試薬では乖離例を除外した群との相関は良好であった.CK-MB蛋白量測定試薬ではCK-アノマリーの影響を回避でき,CK-MB蛋白定量試薬との相関も良好であった.本試薬は汎用機器に使用可能であり,特異性の高いCK-MB蛋白量を迅速に報告することが可能になったと考える.
資料
  • 伊藤 愛美, 野村 秀和, 森本 瞳, 鎌倉 明美, 棚村 一彦, 赤津 義文, 大塚 喜人
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 2 号 p. 236-240
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    2007・2009・2011年度の3ヶ年に5施設の血液培養から検出されたβ溶血性レンサ球菌216株を対象に,Streptococcus pyogenes(Group A Streptococcus:GAS),Streptococcus agalactiae(Group B Streptococcus:GBS)およびGAS・GBS以外のβ溶血性レンサ球菌(non-AB)の3つの菌グループに区分し,検出率と抗菌薬感受性の推移を調査した.検出率に大きな変動は無かったが,S. equisimilisと推定される菌グループの割合が上昇していた.抗菌薬感受性はいずれの菌グループもペニシリン系抗菌薬に感受性であった.エリスロマイシン(EM)耐性は,GASでは2011年度に7株中2株(28.6%)が耐性であり,少ない株数の中にも耐性株が認められた.GBSのEM耐性率に大きな変動は無かったが,non-ABでは耐性率が上昇傾向であった.レボフロキサシン(LVFX)耐性はGBSで年々上昇しており,2011年度には61.1%であった.また,non-ABでも2011年度に1株耐性株が認められ,今後の抗菌薬耐性化に注視が必要である.
  • 大川 龍之介, 村本 良三, 徳原 康哲, 荒木 秀夫, 大久保 滋夫, 横田 浩充, 矢冨 裕
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 2 号 p. 241-247
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    東京都臨床検査技師会(都臨技)データ標準化委員会では,ヒト実試料を用いた精度管理調査を実施し,各項目において,測定機器・試薬で一律な評価を目指している.しかしながら,アルブミン測定においては,ブロムクレゾールグリーン(BCG)法,ブロムクレゾールパープル(BCP)改良法による測定施設間での測定値の乖離より,過去二年間の精度管理調査において,ともに評価対象外となった.そこで本稿では,平成22年度および平成23年度に実施した都臨技精度管理調査のアルブミンの結果について詳細に解析した.結果,BCG法,BCP改良法では平均値に大きな乖離があり,その乖離の大きさは平成23年度の方が小さかった.試料および標準品の蛋白分画の解析をおこなったところ,平成23年度の試料の方が,α分画(α1,α2-グロブリン分画の和)の割合が小さく,各試薬メーカーの標準品の割合に類似していた.実検体の方法間差とかけ離れていることが推察された.また,BCP改良法においてもメーカー間差が認められた.今後,BCP改良法におけるメーカー間差の原因を追求するとともに,さらなるアルブミン測定の標準化を期待したい.
  • 中島 あつ子, 川内 沙織, 堀口 大介, 斉藤 麻奈美, 渡邉 一儀, 柴崎 光衛, 党 雅子, 春木 宏介
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 2 号 p. 248-252
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2015/02/11
    ジャーナル フリー
    自己血輸血は,安全で理想的な輸血療法と言われているが,過誤発生リスクがあることも認識する必要がある.当院の自己血採血は,従来,各診療科にて医師が診療の合間に行っていたが,輸血療法委員会が中心となり「自己血採血集約化」に取り組み、平成22年1月から運用を開始した.また,当院の年間の平均採血数は約370例(690単位)であり,血管迷走神経反応(VVR)発生頻度は1.22%である.自己血採血が集約化され,医師,看護師,臨床検査技師,事務員のチーム医療として稼動したことから,運用が円滑となり,VVRの迅速かつ適切な処置など採血環境も改善された.今後も,安全性の向上と安心な環境づくりに努めていきたいと思っている.
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