2014 年 63 巻 5 号 p. 629-634
肺炎は,日本人の死因の第3位に入る疾患であり,肺炎の原因微生物の特定に微生物検査が果たす役割は大きい.2010年3月から2010年12月までに我々の施設において,肺炎と診断された169名(市中肺炎111名,医療ケア関連肺炎58名)を解析の対象とした.82名(48.5%)の患者で原因菌が同定された.原因菌が同定された割合は,市中肺炎が44.1%,医療ケア関連肺炎が56.8%であり,原因菌が同定された割合は,医療ケア関連肺炎の方が高かった.喀痰が提出された145名の患者のうち,Geckler分類で4群もしくは5群に分類される喀痰は,38名(26.2%)であった.市中肺炎では,重症度が上がるにつれて,原因菌の検出される割合が高くなる傾向が見られ,超重症例の69.2%で原因菌が検出された.一方,医療ケア関連肺炎では,重症度による原因菌の検出割合に差は見られなかった.医療ケア関連肺炎の方が,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,緑膿菌およびグラム陰性腸内細菌科細菌の検出割合が高かった.マイコプラズマ属,レジオネラ属およびクラミドフィラ属をはじめとする非定型病原体は,1例(1.7%)のみであった.肺炎の原因微生物特定には,患者背景,肺炎の種類や重症度を考慮しながら,培養検査の構築をすることも重要であると考えられた.