抄録
マトリックス支援レーザー脱離・イオン化―飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法による細菌名同定に関する報告は多数あるが,最新のMALDI-TOF MS装置であるVITEK MSと従来の細菌名同定法を比較した報告は少ない.我々は臨床分離株314株を用いて,VITEK MSと細菌の生化学的性状に基づく菌名同定機器VITEK2の菌名同定結果を比較した.VITEK MSの同定率は属レベルで93.6%,種レベルで88.9%,VITEK2の同定率は属レベルで95.9%,種レベルで85.0%であった.属レベルではVITEK2の方がVITEK MSより高い同定率を示したが,種レベルではVITEK MSがVITEK2より有意に高い同定率を示した.腸内細菌科の株では検査手技に起因してVITEK MSで菌種が同定できないことがあった.手技の向上及びデータベースの整備によりVITEK MSの同定率は上がると考えられる.