抄録
当院におけるC. difficile毒素遺伝子型およびBinary toxin産生遺伝子の有無について調査を行った。対象は,2010年4月から2011年3月までの1年間と,2012年7月から2012年12月までの半年間にC. difficile infection(CDI)が疑われた糞便587検体を対象とした。その結果,糞便検体587件中の培養陽性は18.9%,培養陰性は81.1%であった。そのうち,保存が可能であった菌株107株について毒素の遺伝子型を調べた結果,toxin遺伝子型の内訳は,toxin A+B+が60.7%,toxin A–B+が15.0%,toxin A–B–が24.3%であった。また,Binary toxin産生遺伝子陽性株は1株認められた。Binary toxin産生遺伝子陽性株においてslpA sequence typingおよびPCR ribotypingによる解析を行ったところ,slpA sequence type y05-02/PCR ribotype hu13027と同定された。以上より,院内におけるC. difficileの培養検査をはじめ,毒素の遺伝子型やBinary toxin産生遺伝子保有の有無などの疫学的調査を行うことは,流行株や施設の現状を知る上で重要であると考えられた。