医学検査
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64 巻, 2 号
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総説
  • 柳田 絵美衣
    原稿種別: 総説
    2015 年64 巻2 号 p. 133-142
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    現在,免疫組織化学(以下,免疫染色)は病理診断の補助的手段として重要な役割を果たしている。昨今の癌治療において,低侵襲・低負荷手術を行う傾向にあり,細胞診検体での判定や診断の依頼件数が増加している。そのため,細胞診検体における免疫染色が注目され,期待されている。日常的な病理検査では酵素抗体法を用いた染色法が主流であり,近年では自動染色装置や新しい染色方法の開発・進歩が目覚ましく,多くの施設で免疫染色が行われている。その一方で,用手法による染色を経験したことのない技師も年々増加しており,免疫染色の原理や方法を理解していない場合も多い。そのため,染色性の良し悪しを自らで判断出来ず,不良染色標本を病理医に提出してしまう可能性がある。自施設の染色標本のレベルと他施設の染色性を知るためにも,染色サーベイを行うことが非常に重要となってきている。多くの都道府県で,染色サーベイが実施され,染色性の精度管理に対する意識も変わりつつある。不良染色標本が誤診断に誘導する可能性があることや,より精度の高い染色標本を作製することが患者・社会に貢献出来ることだという意識を持ち,病理診断を行う病理医と連携しながら,日常業務に取り組みたい。本稿では,日常で行われている免疫染色の現状と新たな手法,さらに精度管理について述べる。
  • 河口 勝憲, 市原 清志
    原稿種別: 総説
    2015 年64 巻2 号 p. 143-154
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    臨床検査データは臨床の現場で病気の診断,治療経過のモニター,予後判定に利用される。しかし,病気以前に患者の身体的特性や採血条件で測定値が変化したり,測定技術上の問題で測定値が動いた可能性を常に念頭に置く必要がある。測定値が変化する原因を分類すると,病態変動,生理的変動,測定技術変動に分けて考えることができる。生理的変動は,さらに個人の年齢,性,環境,生活習慣,遺伝的因子などに左右される個体間変動と,同じ個体内でも検体採取前の体位や活動度,採血時間などで変化する個体内変動に分けてとらえることができる。本稿では個体間変動として年齢,性差,過食・肥満,喫煙習慣,飲酒習慣を,個体内変動として体位,運動の影響,日内リズム,喫煙の短期的影響,飲酒の短期的影響について変動機序とその影響を受けやすい検査項目を系統的に整理して記載する。検査データを正しく判定するには,これらさまざまな生理的変動を熟知しておくことが重要である。
原著
  • 生駒 俊和, 野崎 涼子, 浅井 孝夫, 木下 直彦, 坂井 一明, 土屋 康雄
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻2 号 p. 155-162
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    最近の研究では,ノロウイルス感染予防のためには,保健所からの指導要領の順守と不顕性感染者を早期発見し食品を取扱う部署での就業制限等の措置が重要であることを示している。しかし,これらの状況把握がどの程度必要であるかは明らかでない。本研究の目的は,食品取扱業者における保健所指導要領の順守状況や不顕性感染者率を明らかにすることである。新潟県内の食品取扱業者(ホテル,旅館,食品販売業等)にアンケートを送付し,従業員の健康管理,手洗い方法,二次感染予防対策,ノロウイルスに関する知識の理解など27項目について回答を求めた。このうち22項目は「はい」か「いいえ」で答える直接的な質問であった。得られた結果は,従業員数が10名以下の15施設(A群)と11名以上の12施設(B群)に分けて統計解析した。同時に,リアルタイムRT-PCR法により健常な従業員の糞便中からノロウイルスGenogroup IとIIの検出を行った。「はい」と回答すべき22項目の順守率はA群で9.1%(2/22),B群で31.8%(7/22)であった(p < 0.05)。A群ではB群に比べ「爪ブラシの使用」と「独自の食中毒マニュアルの作成」の順守率が有意に低かった。ノロウイルスGenogroup IIがA群の男性から2名(0.98%)検出された。ノロウイルス感染予防には,小規模施設における保健所指導要領の順守率を上げること,不顕性感染者はノロウイルス陰性まで食品を取扱う部署での就業制限を設けること等が重要である。
  • 鈴木 優治
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻2 号 p. 163-168
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    市販のpH試験紙9種類[thymol blue (TB), bromophenol blue (BPB), bromocresol green (BCG), bromocresol purple (BCP), bromothymol blue (BTB), methyl red (MR), phenol red (PR), cresol red (CR), alizarin yellow (AZY)]における非イオン性界面活性剤(Brij 35およびTriton X-100)により生じる測定誤差について検討した。界面活性剤により負誤差が生じた。測定誤差は界面活性剤濃度に比例し,Brij 35存在下ではBTB,BCG,BCP,BPBにおいて大きく,Triton X-100存在下ではBTB,BCGにおいて大きかった。PR,CR,MR,AZYによる測定誤差は小さかった。測定誤差はpH指示薬の分子量と相関傾向を示した。
  • 今川 朱美, 魚住 恵里子, 潮田 友紀, 白石 瑠美, 池澤 彩, 森田 須美春
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻2 号 p. 169-172
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    敗血症マーカーであるプレセプシンは腎より排泄されるため,慢性腎不全患者や血液透析患者では高値となることが予想される。本研究では感染リスクが高い慢性腎臓病や血液透析患者に関するプレセプシン値の動態を分析した。血液透析患者は健常者と比較し,プレセプシンは有意に高値を示し,98名中96名が敗血症を起こしていないにも関わらずカットオフ値を超えていた。また,透析歴がなく腎機能が低下した患者においても,推算糸球体濾過率(eGFR)が低いほどプレセプシンは高値となり,強い負の相関を示した。そして,血液透析患者は血液透析を行うことでプレセプシン値が37.7 ± 13.1%低下した。これらのことからプレセプシン値は腎機能の重症度と透析の影響を大きく受けることが示唆された。今後も検討を重ね,感染症鑑別の一助としていきたい。
  • 北尾 孝司, 前田 美奈, 石丸 美架
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻2 号 p. 173-178
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    腸管感染症の患者から分離されたC. jejuniおよびカンピロバクター腸炎の原因食品の1つである鶏レバーから分離されたC. jejuniについて,GBSに関連するcst-IIcgtAおよびcstB遺伝子の保有状況について調査を行った。30検体のうち28検体の鶏レバーから検出されたC. jejuniについて調査を行った。そのうちGBSに関連するcst-IIcgtAcgtBの3つの遺伝子を保有するC. jejuniが検出された鶏レバーは,17検体(60.7%)であった。28検体の鶏レバーから検出された246菌株のC. jejuniを用いて,GBSに関連する3つの遺伝子を同時に保有していたのは107菌株(43.5%)であった。腸管感染症の患者糞便から検出された30菌株のC. jejuniについては,8菌株(26.7%)がGBSに関連する3つの遺伝子を保有していた。さらに,GBSに関連する3つの遺伝子をすべて保有する菌株について血清型別検査を実施すると,鶏レバー由来のC. jejuniからは,B群が最も多く10菌株,D群が8菌株,O群が4菌株,残りの菌株はuntypeableであった。また,胃腸炎患者由来のC. jejuniについては,D群およびO群がそれぞれ3菌株,残りの菌株はuntypeableであった。このことから,血清型別検査によって,GBSに関連するC. jejuniの同定には有用ではなく,GBSに関連する遺伝子cst-IIcgtAcgtBの検出を実施する方法がより有用であることか分かった。
  • 田中 佳, 松本 正美, 田中 千津, 中川 静代, 柳田 善為, 永田 勝宏, 飯沼 由嗣
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻2 号 p. 179-185
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    我々は過去3年間に当院で尿酸アンモニウム(Ammonium Urate; AU)結晶を報告した15検体に関して患者背景および関連の検査結果を検討した。その結果,尿pHは15件中13件が酸性側に出現しており,これはAU結晶の多くはアルカリ性尿に出現するとされていたこれまでの報告とは異なっていた。その原因のひとつとして,近年本邦の尿沈渣検査が迅速に検査されるようになり,採尿時間が経過してアルカリ化した古い尿が減少したことなどが推察された。また,本結晶出現検体の背景を対照群と比較した結果,患者の多くは低年齢層であり(p < 0.001),男性に偏りを認めた(p < 0.05)。これは酸性AU結石症による腎後性腎不全の出現背景とも合致しており,AU結石症と尿沈渣検査のAU結晶の関連性が示唆される。また,尿比重は有意に高値を示し(p < 0.001),脱水・乏尿(p < 0.001)の症状が高頻度に見られた。尿の濃縮,停滞は尿路結石症のリスクファクターであることから,尿沈渣におけるAU結晶の出現はAU結石症に注意すべき所見であり,かつ脱水にも注意すべき所見と考えられた。
症例報告
  • 松本 いつか, 松尾 龍志, 久保田 緑
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻2 号 p. 186-190
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    今回,我々は骨髄壊死部からClostridium haemolyticumC. haemolyticum)を検出するというまれな症例を経験した。生前に骨髄壊死と診断された症例の報告は非常に少なく,また本菌は牛や馬などの家畜に対して細菌性血色素尿症を起こすことで知られている。症例は発熱と腰痛を主訴として当院を受診し,消化管原発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DCBCL)およびBurkittリンパ腫疑いとの診断で化学療法を実施した。その後,小腸潰瘍および出血により小腸の部分切除を行った後の骨髄検査にて骨髄壊死が判明した。3回の培養では陰性だったが,4回目の培養にてClostridium sp.を検出した。当院で行っている嫌気性菌同定法ではC. tetaniの可能性も否定できなかったことからpenicilin G(PCG),破傷風トキソイド,テタノブリン投与の治療と並行し,菌の特定に苦慮したため他施設の協力を得て同定に至った。症例は抗菌薬の投与,骨髄洗浄後を継続した結果,増強していた腰痛が改善し,骨髄培養は陰性化した。菌の同定率を向上させるためには他法を利用し,判断材料となる生化学的性状を増やすことが効果的である。今後,嫌気性菌の同定に苦慮する場合に備えて,別法を検討する余地がある。
  • 宮本 直樹, 高森 稔弘, 福田 千佐子, 廣岡 保明, 杉原 進, 玉崎 章子, 前垣 義弘
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻2 号 p. 191-195
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    前庭性頸筋電位(vestibular evoked myogenic potential; VEMP)は音刺激により誘発される電位を頸筋,特に胸鎖乳突筋(sternocleidomastoid muscle; SCM)から導出するもので,臨床では球形嚢,下前庭神経,そして前庭脊髄路病変の診断などに応用されている。症例はめまいと眼球異常を主訴とする15歳女児。VEMP検査では左刺激で波形消失を認めた。MRIでは左橋下部腹側と右橋背側部にT2WI高信号域を認め,経過中に大脳白質に病変が出現した。VEMP電位発生経路に含まれる前庭神経核は橋および延髄の背側に位置しており,同部位でのMRI所見とVEMP検査結果は一致しなかった。今回のVEMP検査結果は前庭神経核,または前庭脊髄路の機能異常をとらえたもので,MRIで指摘できなかった病変を反映していると考えられた。
技術論文
  • 信広 亮輔, 柴田 淳, 小林 剛, 脇本 真帆, 佐々木 なおみ
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻2 号 p. 196-201
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    細胞診標本作製後の検体を用い,安価で簡便なセルブロック作製法を併用し,診断精度向上を目的とした。綿棒チューブを用いた簡易セルブロック作製法にて膵液・胆汁39症例,EUS-FNAによる膵穿刺10症例,体腔液25症例,計74症例を検討した。免疫組織化学(以下,免疫染色)は15症例に施行した。細胞診標本では74症例中,陽性例は23症例(31%)であり,疑陽性例は12症例(16%)であった。セルブロック標本を併用すると陽性例は74症例中30症例(41%)であり,疑陽性例は5症例(6%)であった。細胞診標本では細胞の重積が強く,良悪性の判定が困難な症例もセルブロック標本を作製することで,個々の細胞形態や核配列を観察することができた。セルブロック標本と細胞診標本とを併用することで細胞診断における疑陽性判定を減少させることができた。本法は他法に比べ,安価かつ簡便であり,ルーチンへの導入も容易であった。また,免疫染色を併用することで良悪性の鑑別のみならず,組織型決定も可能となった。
  • 風間 由美, 北島 明子, 近藤 好恵, 品田 佳位, 渡辺 美津江, 小竹 美佐江, 松本 幸男
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻2 号 p. 202-209
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    虫様筋-骨間筋比較法(2L-INT法)は,簡便さと高い感度により手根管症候群診断検査として推奨されている。しかし,複合筋活動電位(CMAP)導出に用いられる第2虫様筋(2L)は手掌表面からは確認し難く,決定しやすい導出電極位置が求められる。今回我々は2L-INT法における導出電極位置の検討を行った。導出電極位置は第2指と第3指の間から手根部中央までの線上で中手骨頭の高さをa,母指球筋境界の高さをd,その間を3等分しそれぞれb,cとし,各電極位置における2L-CMAP,INT-CMAP各々の①潜時 ②CMAP振幅 ③CMAP立ち上がり値と④2L-INT潜時差(2L-INT値) ⑤検者間差を検討した。導出電極位置が中手骨頭の高さ及び母指球筋境界線上では振幅が低い例や立ち上がりが陽性になる例があり,また2L-INT値が延長する例もあるため偽陽性になる可能性があると推察され,導出部位としては適さないと考えられた。一方,第2指と第3指の間から手根部中央までの線上で手掌中央部付近は振幅が高く電極位置の違いによる2L-INT値の変動が少なかったため,導出部位に適していると考えられた。
  • 渡邉 勇気, 佐藤 伊都子, 林 伸英, 藤岡 由夫, 河野 誠司
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻2 号 p. 210-215
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    選択的可溶化法を原理とする改良LDLコレステロール(LDL-C)測定試薬(メタボリードLDL-C)の基礎的検討を行い,高TG血症検体を用いて,従来試薬との比較検討を行った。基礎的検討の結果,同時再現性,日差再現性はそれぞれ変動係数(CV)が0.5~1.3%,0.4~0.6%であり,677 mg/dLまで原点を通る希釈直線性が得られた。添加回収試験では回収率が99~102%で,共存物質の影響は,ビリルビン,ヘモグロビン,乳び,リウマトイド因子,ヘパリン,イントラファットでほとんど影響が認められなかった。従来試薬との相関(n = 272)は回帰式y = 0.98x − 0.9,相関係数r = 0.995となった。高TG血症検体について,簡易BQ法の測定値を用いて比較すると,従来試薬に比べ,改良試薬の方が簡易BQ法の測定値とより近似した値を示していた。メタボリードLDL-Cは,基礎的検討において良好な成績を示し,従来試薬と比べ,簡易BQ法におけるLDL-C値と近似する試薬である。
  • 森下 良美, 宇賀神 和久, 津田 祥子, 望月 照次, 詫間 隆博, 福地 邦彦
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻2 号 p. 216-220
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    Clostridium difficile(CD)は抗菌薬関連下痢症の原因菌であり,院内感染対策上重要な菌である。当院では,Clostridium difficile infection(CDI)の診断補助として糞便中のToxin A/BとCD抗原であるグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)を同時に検出可能な迅速診断キットを使用している。しかし,糞便を直接使用する方法はToxin検出の感度が低いため,今回我々はこのキットの運用方法について検討を行ったので報告する。新運用方法ではGDH(+)Toxin(−)の場合,結果を判定保留とし,培養検査を追加して発育した菌株からの結果を最終報告とした。この新運用方法により,Toxin A/B検出率は2013年10月から2014年3月までの6ヶ月間で7%(34/458件)から13%(58/458件)へと約2倍の増加が認められ,CDI診断に極めて有用であることが示唆された。
  • 山口 育男, 木下 育哉, 齊藤 知枝, 山本 優, 山本 恵子, 繁原 矢枝子, 伊藤 由美
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻2 号 p. 221-226
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    Legionella属菌の培養には特殊な培地で数日を要することから,レジオネラ症の診断には,イムノクロマト法を原理とする迅速診断試薬が広く利用されている。本検討では,新規イムノクロマト試薬であるイムノキャッチ®-レジオネラのレジオネラ抗原検出における有用性を検討した。希釈試験では,対照試薬であるBinaxNOW®レジオネラ及びチェックレジオネラよりも高い検出感度であり,Qライン極東レジオネラと同等であった。また,Qライン極東レジオネラと並び,最もテストラインの出現時間が早かった。肺炎症状を呈する100症例の尿検体でのイムノキャッチ®-レジオネラとBinaxNOW®レジオネラの陽性一致率,陰性一致率,全体一致率はそれぞれ100%(1/1),99.0%(98/99),99.0%(99/100)であった。判定結果が一致しない1症例は,BinaxNOW®レジオネラにおいて陰性であったが,検体を濃縮して測定した場合は陽性となったことから,BinaxNOW®レジオネラの感度不足による偽陰性であることが示唆された。イムノキャッチ®-レジオネラは希釈液を使用せず,対照試薬に比べ操作法が簡便である。さらに,対照試薬と同等以上の検出感度を有し,臨床検体の測定においても良好な成績が得られたことから,Legionella pneumophila血清型1を起因菌とするレジオネラ症の迅速診断法として臨床的に有用である。
資料
  • 古野 貴未, 村山 未来, 下地 法明, 秋永 理恵, 桑岡 勲, 赤津 義文, 大塚 喜人
    原稿種別: 資料
    2015 年64 巻2 号 p. 227-235
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    2008年度から2012年度の5年間に病床数の異なる福岡,長野,沖縄に立地した3施設において,髄液検査を施行し,髄膜炎,髄膜炎疑いと診断された症例数,髄液所見や髄液培養結果,検出菌の割合と検出菌年次推移を調査した。3施設合計の検出菌上位は,S. pneumoniaeH. influenzaeE. coli,MSSAの順であり,細菌性髄膜炎で髄液培養陰性の割合は41.1%と高く,無菌性髄膜炎の病原体判明率は3.6%と低いことが明らかになった。培養陽性群と培養陰性群での有意差検定では,髄液糖と血糖の比では有意差を認めた(p = 0.021)。起炎菌が検出されない髄膜炎症例でも,遺伝子検査等で微生物が明らかになれば,薬剤が確実に投与でき,適切な治療に結びつくと思われる。今後,遺伝子検査の必要性も示唆された。
  • 石田 奈美, 佐藤 伊都子, 林 伸英, 三枝 淳, 河野 誠司
    原稿種別: 資料
    2015 年64 巻2 号 p. 236-241
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    高速凝固採血管は管口内部壁にトロンビンが塗布されているため,迅速な検査結果報告に適した採血管である。しかし,トロンビン添加が検査値に与える影響について一部の項目しか検討されていないことから,健常者を対象にして,ガラス製採血管,従来凝固促進採血管,高速凝固採血管の3種類の採血管を用いて検査値の比較検討を行った。検査項目は生化学関連検査59項目,腫瘍マーカー・ホルモン関連検査38項目,感染症関連検査24項目,自己免疫関連検査25項目の合計146項目である。それぞれの項目について3種類の採血管の測定値の平均とSDを求め,ガラス管を対照に高速凝固採血管および従来凝固促進採血管の測定値について関連のある2群間の差の検定を行った。その結果,一部の項目で有意差(p < 0.05)を認めたが,対象が健常人のため測定値が近似しており小さな差で統計学的有意となった可能性があった。いずれも臨床的に問題のない範囲であった。健常人において高速凝固採血管を用いた検査値は,ガラス製採血管と比較して臨床的に問題となるような検査値への影響は認められなかった。
  • 原 稔典, 古霜 麻紀, 小野寺 一, 木場 由美子, 長岡 里枝, 大毛 宏喜, 横崎 典哉
    原稿種別: 資料
    2015 年64 巻2 号 p. 242-246
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2015/05/10
    ジャーナル フリー
    当院におけるC. difficile毒素遺伝子型およびBinary toxin産生遺伝子の有無について調査を行った。対象は,2010年4月から2011年3月までの1年間と,2012年7月から2012年12月までの半年間にC. difficile infection(CDI)が疑われた糞便587検体を対象とした。その結果,糞便検体587件中の培養陽性は18.9%,培養陰性は81.1%であった。そのうち,保存が可能であった菌株107株について毒素の遺伝子型を調べた結果,toxin遺伝子型の内訳は,toxin A+B+が60.7%,toxin AB+が15.0%,toxin ABが24.3%であった。また,Binary toxin産生遺伝子陽性株は1株認められた。Binary toxin産生遺伝子陽性株においてslpA sequence typingおよびPCR ribotypingによる解析を行ったところ,slpA sequence type y05-02/PCR ribotype hu13027と同定された。以上より,院内におけるC. difficileの培養検査をはじめ,毒素の遺伝子型やBinary toxin産生遺伝子保有の有無などの疫学的調査を行うことは,流行株や施設の現状を知る上で重要であると考えられた。
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