2015 年 64 巻 3 号 p. 324-329
アルカプトン尿の証明に用いられる一般的なスクリーニングの方法には,室温放置法と10%水酸化ナトリウム添加法がある。これらの方法は,色調変化が不明瞭のため判定が困難な場合があった。尿が全体的に黒褐色調へ変化するまでに要する時間を検討したところ,次の結果が得られた。希釈尿や酸性尿を室温放置した場合は約1カ月以上,濃縮尿やアルカリ尿の場合は数日,水酸化ナトリウムを添加した場合では約4~5時間であった。以上より,黒褐色調の変化には相当の時間を要する場合があることが判明した。今回,尿の黒色調変化がホモゲンチジン酸の酸化に起因していることを利用して,4通りの方法を検討したところ,アルカプトン尿に水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムを混合添加した方法は,従来法に比べ,極めて迅速かつ明瞭に色調変化を確認できることが判明した。アルカプトン尿症は,小児期では尿が黒変する以外に特に症状がないため放置され,生後数十年を経て,関節障害を特徴とする不可逆的な病変に伴う臨床症状が出現して初めて診断される場合が多い。本症は,発症早期に治療介入することで,病変の進行を阻止できる可能性が大きいことから,簡便かつ迅速な診断方法の確立が望まれる。今回の我々の方法は,アルカプトン尿症の新規スクリーニング法として期待される。