抄録
Aeromonas属菌の腸管外感染症171症例の基礎的解析を行ったので報告する。死亡例21例,劇症型の症例5例,壊死性疾患4例(うち壊死性軟部組織感染症1例)が認められた。患者の平均年齢は73.3歳で,60歳以上が86.0%を占めていた。基礎疾患では肝胆膵系の疾患の他に糖尿病,悪性腫瘍など免疫状態の低下を招くようなものが高率に認められた。死亡例に限ってみるとその傾向はさらに強まった。臨床診断名は肝胆膵系の疾患,敗血症,誤嚥性肺炎,膿瘍・創傷感染,壊死性軟部組織感染など多岐にわたる。抗菌薬感受性検査では,TAZ/PIPC,CTX,CAZ,IPM/CS,GM,LVFX,STに良好な感受性率を示し,一方でSBT/ABPC,CEZにはほとんど耐性であった。またIPM/CSに非感受性の株も4.3%とわずかながら存在していた。これらは多剤耐性の傾向はみられなかったが,何らかの耐性機序を発現している可能性が考えられるとともに,今後もAeromonas属菌の抗菌薬耐性状況に注視していく必要があると思われた。