医学検査
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原著
病理標本のアーチファクトの克服(第2報)―スダレ発生のメカニズムとその解消方法の検討―
西川 武田中 京子龍見 重信小関 久恵松尾 郁福井 義雅大林 千穂
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2015 年 64 巻 3 号 p. 288-294

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抄録
今回我々は標本検鏡時に細胞の核内や細胞質に見られる,細かな波状の切片の割れを伴うアーチファクトを「スダレ」と呼び,その発生し易い状況を検討し,発生機序と解消法を考えた。スダレは膠原線維,細網線維,筋線維などの線維成分が密な部位ではほとんど見られず,凝血塊や腺腫の腺管部分など細胞が密在する部分に多くみられた。スダレを生じ易い薄切条件は,薄切厚が厚い,薄切速度が速い,ブロック温度が低いことであった。スダレ解消にはブロック表面に水分を与え,表面組織を水和することが有効であった。これらよりスダレ発生は,組織ブロック作成時の脱水により,組織・細胞が脆弱化することに加え,線維成分の量や組織内に介在するパラフィンの量,さらには薄切手技など複合的な要因で発生すると思われた。
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© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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