医学検査
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技術論文
新たに開発された重炭酸塩測定キットの基礎的性能評価と変動要因の解析
古川 聡子河口 勝憲加瀬野 節子岡崎 希美恵前田 ひとみ佐々木 環通山 薫
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2015 年 64 巻 4 号 p. 445-452

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抄録
血清中の炭酸ガス(CO2)は重炭酸塩(HCO3)と平衡状態にあり,血液中で最も重要な生理学的緩衝作用系を形成している。このため,HCO3測定は電解質分散,アニオン不足の有意な指標であり,代謝系の酸塩基不均衡の医学的診断に有用である。今回,東洋紡により開発された重炭酸塩測定キット「ダイヤカラーCO2」は酵素法を原理としており,汎用自動分析装置での測定が可能である。日立LABOSPECT008における分析条件は検体量:1.5 μL,希釈水:120 μL,試薬量:30 μL,測光ポイント:3–17,主波長:405 nm,副波長:505 nm,分析方法:2ポイントエンド,キャリブレーション法:リニアとした。また超音波攪拌レベルは検討の結果,最も安定していたレベル7とした。基礎的性能評価については,精密性,正確性,直線性ともに良好であった。同様の測定原理である対照試薬(フレックスカートリッジ重炭酸塩ECO2:シーメンス)との相関では本試薬が若干低値傾向を認めた。試料の安定性については,採血量が少ないほど低値傾向となり,サンプルカップに血清分注後20分以降は有意な低下を認めた。本試薬は汎用試薬として今後の酸塩基不均衡の診断に大きく貢献できると考えられる。
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© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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