医学検査
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64 巻, 4 号
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総説
  • 片山 雅史
    原稿種別: 総説
    2015 年64 巻4 号 p. 389-397
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    神経生理検査は臨床検査技師の業務の一つであるが,その煩雑さと解釈が難解であることから,他の生理学的検査と比較すると実施件数がやや少ないのが現状である。脳や神経の機能を調べる研究は18世紀から始まり,測定機器の電気的技術の進化とともに発展してきた。従来から施行されている神経生理検査の基本的原理や,疾患の診断にどのように関わっているのかを把握し習得することは必要不可欠である。しかし今後も検査法や機器の開発はさらに続くことが予想され,取り扱う臨床検査技師もそれに対応できる知識と技術を養っていくことが求められる。また,臨床における神経機能の診断においては,画像検査や他の検査結果も重要であり,神経疾患に対して総合的に判断できる能力を身につけていく必要がある。本稿では神経生理検査のこれまでと現状,および今後新たな技術や知見にどのように対処していくべきか述べる。
原著
  • 勝部 瑞穂, 三島 清司, 兒玉 るみ, 足立 絵里加, 新田 江里, 山口 一人, 野津 泰子, 長井 篤
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻4 号 p. 398-404
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    可溶性フィブリン(SF)は凝固亢進状態を反映し,血栓症および血栓準備状態を推測する凝固系分子マーカーとして注目されている。我々はSFの深部静脈血栓症(DVT)の診断および治療効果判定における有用性について検討を行った。下肢静脈エコー実施前後1日以内に採取されたクエン酸血漿の残余検体53検体を対象にSFとD-dimerを測定,これらとエコー所見の関連性について検討した。その結果,D-dimerはDVTの陰性的中率が100%であり,除外診断に有用であった。一方,SFは新鮮血栓に対する陽性的中率が90%以上でありDVTの急性期を鋭敏に捉えていると考えられた。症例検討では血栓発見から再発,器質化までのSFとD-dimer値の推移を観察し,過凝固状態が改善されるとSFが速やかに低下することが確認され,治療効果判定におけるSFの臨床的有用性が示唆された。
  • 三井 規雅, 熊谷 望美, 鈴木 ななみ, 岡田 智香子, 油座 博文
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻4 号 p. 405-412
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    埼玉県では2012年10月より母子保健事業の一環としてタンデム型質量分析計による新生児マススクリーニングを開始した。2014年12月までの2年3か月間で埼玉県内にて出生した新生児105,905人の検査を実施した。その結果,精密検査となった32例のうち専門医療機関を受診し最終的に患児と診断されたのは14例(アミノ酸代謝異常症6例,有機酸代謝異常症2例,脂肪酸代謝異常症6例)であり,患児発見率は1/7,564人であった。このスクリーニングの導入により一度の分析で20種類以上の先天代謝異常症を網羅的に発見することが可能となった。新生児マススクリーニングは単に検査機関が検査結果を産科医療機関に報告して終わるものではない。患児とその家族のフォローアップを重視したシステムの構築が必要であり,検査機関,産科医療機関,コンサルタント医師,治療医療機関,自治体母子保健課等が相互に綿密な連携を取ることが重要である。
  • 間瀬 浩安, 田中 彩乃, 篠生 孝幸, 野崎 司, 浅井 さとみ, 宮地 勇人
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻4 号 p. 413-420
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    カフェインはコーヒーや紅茶などに含まれる一般的な物質である。また感冒薬や鎮痛薬など市販薬などにも含まれる物質である。今回,我々は血中カフェイン濃度についてLC-MS/MSを用いイブプロフェン,エテンザミドおよびロキソプロフェンとの同時分析を可能にした。カフェインのPrecursor ionは195.1 m/z,Product ionは138.1 m/zであった。固相カートリッジ抽出の回収率は90%以上であった。HLBを使用した検出限界は0.01 μg/mLであった。イブプロフェン測定法では1.1分に検出され,テオフィリンを測定した場合にもカフェインへの干渉はなかった。缶コーヒー飲用時の血中カフェインピーク濃度は5.65 μg/mL,ピーク時間は60分,半減時間は360分であった。カフェインがイブプロフェン等と同時に測定できることは,感冒薬や鎮痛薬の過量服用の場合の迅速測定に有用である。
症例報告
  • 鞆 美和香, 福﨑 喜美代, 大川 真由, 根ヶ山 清, 三好 そよ美, 山本 直子, 舩本 康申
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻4 号 p. 421-427
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは血液培養からnutritionally variant streptococci(NVS)が分離された症例を続けて2例経験した。症例1は61歳女性で,腰痛が続くため受診し,化膿性脊椎炎の診断で加療となった。入院時に採取された血液培養からグラム陽性レンサ球菌が検出され,Abiotrophia defectivaと同定された。症例2は84歳男性で,発熱とSpO2の低下を認め,尿路感染症および敗血症にて緊急入院となった。入院時に採取された尿および血液培養からグラム陽性のブドウ状配列をなす球菌が検出され,Granulicatella adiacensと同定された。症例1でNVSの分離を初めて経験し,本菌の特性や同定のポイントを知ったことで,症例2では初期段階からNVSを考慮した対応をとることができた。NVSは栄養要求性が特殊なため,分離には適切な培地や培養条件を選択することが重要である。特に血液培養では確実かつ迅速に起炎菌を検出することが求められるため,サブカルチャーにはチョコレート寒天培地やブルセラHK寒天培地を併用し,より早い段階でNVSを識別することが必要であると考えられた。
  • 原田 崇浩, 長島 恵子, 北沢 敏男, 峰岸 正明
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻4 号 p. 428-432
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    本邦でも極めてまれなSalmonella enterica subup. enterica serovar Choleraesuisによる胸部皮下膿瘍の1例を経験した。症例は38歳,男性。左前胸部痛から他院を外来受診し,切開排膿するも増悪傾向のため当院へ紹介入院となった。身体所見および画像所見から左前胸部皮下膿瘍と診断された。後日,再度外科的切開排膿術が行われ,同切開部位の開放性膿培養からS. Choleraesuisが検出された。また,外部機関の解析からS. Choleraesuis O7:c:1,5と同定され,侵入性因子関連遺伝子(InvA遺伝子)も陽性であった。S. Choleraesuisを含む非チフス性サルモネラ(non-typhoid-salmonella; NTS)は膿瘍から検出されることが極めてまれである。一般的にS. CholeraesuisなどのNTSによる局所感染は一般臨床医の認知度が低いため,治療の遅延を生ずることが予想されることから,専門的な情報の提供情報が必要と思われた。また,NTSは潜在的に医療関連感染を起こす可能性があるため,感染対策上および適正な抗菌薬治療においても迅速に菌を検出する必要があることに加えて,S. Choleraesuisの侵襲性が高い特徴を考慮すると,積極的な血液培養検査の施行による菌の早期検出が望まれる。
  • 積田 奈津希, 大栁 忠智, 黒沢 未希, 高木 妙子, 山﨑 哲, 國島 広之, 竹村 弘
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻4 号 p. 433-440
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    本邦ではまだ報告がないGemella sanguinisによる感染性心内膜炎(infective endocarditis; IE)を経験した。症例は57歳,女性。2012年5月上旬より発熱を繰り返し,労作時に呼吸苦と動悸を認めたため精査加療目的で当院循環器内科に入院となった。入院時の血液培養から検出された菌は,市販の生化学的同定キットでGemella haemolysansと同定されたが,mannitol,sorbitol,alanyl phenylalanine proline arylamidase等の生化学的性状に非典型的反応を認めた。16S rRNA塩基配列解析と質量分析装置による同定検査を行ったところ,G. sanguinisと同定された。その後の外科手術にて採取した大動脈弁の疣贅からも同一菌の遺伝子が検出されたため,本菌によるIEと診断された。抗菌薬は入院時よりpenicillin G,gentamycinが投与され,弁置換術施行により症状の改善が認められた。G. sanguinisによるIEに関する報告は,海外で数例あるものの本邦での報告はない。症例によって遺伝子解析,質量分析装置による同定も考慮する必要がある。また,一部の薬剤に耐性を示す報告があるため,薬剤感受性検査を行うことも重要であると考える。
  • 木村 照子, 菊池 郁代, 鍋屋 恵理, 前田 絵美
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻4 号 p. 441-444
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性,血液検査でHb 6.7 g/dLと重度の貧血を認めた。貧血の原因精査および輸血目的で入院となった。入院時検査所見より鉄欠乏性貧血と診断された。輸血検査結果は,血液型A型RhD陽性,不規則抗体スクリーニング陽性であった。スクリーニング血球との反応態度より,高頻度抗原に対する抗体の存在を疑い,血液センターに精査依頼した。その結果,患者はJra抗原陰性,同定抗体は抗Jraと報告された。鉄剤の内服投与により,貧血の改善傾向を認めたため,輸血は行わず経過観察となった。血液センターの協力のもと家系調査を実施した結果,子供はJra抗原陽性であった。Jra抗原陰性のような稀な血液型であるため,緊急時や大量の血液が必要とされる場合,抗原陰性血の緊急もしくは必要量の確保ができない可能性が想定される。これらの対応を,臨床側や血液センターとの連携をふまえて検討し,緊急輸血マニュアルを作成した。
技術論文
  • 古川 聡子, 河口 勝憲, 加瀬野 節子, 岡崎 希美恵, 前田 ひとみ, 佐々木 環, 通山 薫
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻4 号 p. 445-452
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    血清中の炭酸ガス(CO2)は重炭酸塩(HCO3)と平衡状態にあり,血液中で最も重要な生理学的緩衝作用系を形成している。このため,HCO3測定は電解質分散,アニオン不足の有意な指標であり,代謝系の酸塩基不均衡の医学的診断に有用である。今回,東洋紡により開発された重炭酸塩測定キット「ダイヤカラーCO2」は酵素法を原理としており,汎用自動分析装置での測定が可能である。日立LABOSPECT008における分析条件は検体量:1.5 μL,希釈水:120 μL,試薬量:30 μL,測光ポイント:3–17,主波長:405 nm,副波長:505 nm,分析方法:2ポイントエンド,キャリブレーション法:リニアとした。また超音波攪拌レベルは検討の結果,最も安定していたレベル7とした。基礎的性能評価については,精密性,正確性,直線性ともに良好であった。同様の測定原理である対照試薬(フレックスカートリッジ重炭酸塩ECO2:シーメンス)との相関では本試薬が若干低値傾向を認めた。試料の安定性については,採血量が少ないほど低値傾向となり,サンプルカップに血清分注後20分以降は有意な低下を認めた。本試薬は汎用試薬として今後の酸塩基不均衡の診断に大きく貢献できると考えられる。
  • 内田 一豊, 池田 彩也花, 濱田 智博, 榊原 沙知, 手嶋 充善, 山口 育男, 田中 規雄
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻4 号 p. 453-459
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    POCT対応血糖測定器として開発された新機種アントセンス デュオ(株式会社堀場製作所)の基礎的検討を行う機会を得たので報告する。検討結果として,全血検体(60~400 mg/dL)での同時再現性は,CV 1.0~2.3%となり,低血糖領域(60 mg/dL以下)においてもCV 3.0%以下と良好であった。直線性は,10~1,000 mg/dLの広範囲で良好であった。相関性は,アントセンス デュオでの全血検体と全自動分析装置GA08(株式会社A&T)による血漿検体は,y = 1.04x – 4.32,r2 = 0.997と良い相関を認めた。ヘマトクリット値の影響は,低値で5.0~9.0%の血糖値上昇を示し,高値の場合は11.0%の減少が認められた。溶存酸素および各種共存物質の影響は認められなかった。このように,各基礎的検討においては良好な結果であり,POCT対応血糖測定器として有効に活用できると思われた。
  • 坂梨 大輔, 宮﨑 成美, 鈴木 隆佳, 大野 智子, 山田 敦子, 末松 寛之, 山岸 由佳, 三鴨 廣繁
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻4 号 p. 460-467
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    近年,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌の増加が大きな問題となっている。特に,カルバペネマーゼ産生菌は責任遺伝子がプラスミド上に存在し菌種を超えた伝播をきたすため注意が必要であるが,日常的に実施されている薬剤感受性試験ではカルバペネム系抗菌薬に感性の場合もあり存在が見落とされる危険性がある。本研究では,既報文献を参考に6種類のprimerを選択し,プラスミド性カルバペネマーゼ遺伝子,IMP,VIM,OXA-48-like,NDM,KPC,GESを1チューブで検出可能なMultiplex PCR法の確立を試みた。既存の3種類のPCR試薬について,IMP型5菌種5株,GES型1菌種1株,VIM型2菌種2株,NDM型1菌種2株,OXA-48-like型1菌種1株,KPC型1菌種2株の計9菌種13株のグラム陰性菌を用いた感度の検討および25菌種30株の上記遺伝子非保有グラム陰性桿菌を用いた特異度の検討を実施した結果,我々のmultiplex PCR法においてはPlatinum® Multiplex PCR Master Mix(Applied Biosystems)の使用が最適と考えられた。本法は上記6種類の遺伝子のスクリーニングが1チューブ内で可能であり効率的,経済的であった。また,DNA抽出から遺伝子確認まで3.5時間と迅速性にも優れており有用性が高いと考えられた。
  • 松本 祐弥, 今田 浩生, 星野 真紀子, 芳賀 美子, 福嶋 敬宜
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻4 号 p. 468-474
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    Direct fast scarlet 4BS(以下,DFS)はアミロイド物質を特異的に染色するが,時としてアミロイドの染色不良や膠原線維への共染を経験する。これらの予防策として,塩を添加することによる染色液の調整法がこれまでいくつか報告されている。本検討では塩の種類・組み合わせに焦点を当て,DFS染色液調整法の検討を行った。DFS染色液に塩化ナトリウム,炭酸ナトリウム,硫酸ナトリウムの3種類の塩をそれぞれ添加した。さらに,これらの塩から任意の2種類を組み合わせて添加したもの,塩を添加しないコントロールを含む計7系列の染色液を作製した。全身性アミロイドーシス(AA型)と診断された剖検例の肝臓パラフィンブロックの連続切片を作製し,各系列のDFS染色液で染色した。染色した切片に対して,(1)アミロイドの染色性,(2)膠原線維への共染の程度を評価した。染色性の評価は,目視に加え,色の差を数値化することが可能であるCIE 1976 L*a*b*色差式を採用し定量的な評価を試みた。結果として,アミロイドの染色性は塩の種類・有無による差は明らかではなかった。膠原線維への共染は炭酸ナトリウムを添加した染色液で染色した切片で抑制された。本検討結果よりDFS染色液への炭酸ナトリウムの添加は,アミロイドの染色性を維持しつつ共染を抑制する点で有用であることが示唆された。
  • 川西 なみ紀, 則松 良明, 大﨑 博之, 坂東 史郎, 升野 博志, 田城 孝雄
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻4 号 p. 475-482
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    BDシュアパス法の保存液は婦人科用(シュアパスバイアル;Gyne)と非婦人科用に大別され,さらに非婦人科用保存液はサイトリッチレッド(Red)とサイトリッチブルー(Blue)の2種類が存在する。GyneとRedは溶血能と蛋白凝集抑制作用を有する。一方,Blueには溶血能や蛋白凝集抑制作用は無いとされているが婦人科,非婦人科に関わらず,細胞診検体における微量な血液の混入や蛋白の存在は肉眼では判断できない。そこで我々は,上記3種類の保存液の日常業務における運用方法の策定を行うことを目的として,擬似保存液を作製し,それぞれの保存液の溶血能力と蛋白凝集抑制作用について比較検討を行った。その結果,①Blueでは,溶血能力がGyneやRedよりも弱いために,血液は完全に溶血せず,Ghost赤血球や血液残渣が標本全体に塗抹されるため,目的とする細胞の塗抹量が十分でない場合がある。②GyneとRedは溶血能を有し,さらにホルムアルデヒドを含むため,メチレン架橋による蛋白凝集抑制作用を有する。しかし,GyneはRedよりもホルムアルデヒド濃度が低いため,時間経過とともに蛋白凝集抑制作用が低下することが明らかになった。したがって,Gyneでの長時間の細胞保存は,目的とする細胞の塗抹量が十分でない場合があることを認識する必要がある。
  • 小野原 健一, 吉多 仁子, 田澤 友美, 松下 茜, 河原 邦光, 橋本 章司
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻4 号 p. 483-488
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    【目的】TRCReady MTB/MAC(TRC法)は転写-逆転写協奏反応(transcription reserve transcription concerted reaction; TRC反応)を原理とし,自動で核酸の精製,増幅,検出を行う新しい抗酸菌検出法である。結核菌およびMAC検出におけるTRC法と,当院で実施しているコバスTaqMan MTB/MAI(PCR法)を比較検討した。【期間・対象・方法】2012年11月から2013年7月までにPCR法による結核菌同定依頼があった135検体(培養陽性49,陰性86),MAC同定依頼があった107検体(培養陽性64,陰性43)を対象としてTRC法とPCR法を施行し,培養結果との相関および測定時間を比較した。【結果】結核菌検出で培養との一致率は,TRC法95%(感度90%,特異度98%),PCR法94%(感度88%,特異度98%),MAC検出での一致率は,TRC法96%(感度97%,特異度95%),PCR法97%(感度98%,特異度95%)であった。NALC-NaOH処理後の検体から測定結果が出るまでに要した時間は,TRC法約50分,PCR法約210分であった。【まとめ】自動化されたTRC法はPCR法と同等の検出性能を有し,簡便に短時間で結果が得られる結核および肺MAC症の迅速診断に有用な検査法であると考えられた。
  • 田中 祥子, 佐藤 翠, 塩谷 美江子, 木杉 玲子, 池田 勇一, 海渡 健
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻4 号 p. 489-494
    発行日: 2015/07/25
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    メトトレキサート(以下MTX)は,核酸合成を阻害して細胞増殖を抑制する薬物で,主に抗悪性腫瘍薬として使用されている。しかしMTXには,骨髄機能抑制や肝・腎機能障害などの副作用があるため,投与中は血中濃度のモニタリングが必要とされる。今回我々は,新しく開発されたホモジニアスエンザイムイムノアッセイを用いた血中MTX測定試薬「ナノピアeTDMメトトレキサート」(積水メディカル株式会社)の基礎的検討を行った。その結果,同時再現性CV 1.3~2.6%,日差再現性CV 0.4~3.9%,希釈直線性1.20 μmol/Lと良好な結果が得られ,また,ほとんどの共存物質の影響は受けず,従来法(TDx,メトトレキサート-II・ダイナパック)との相関性も良好であった。本試薬は汎用自動分析装置で使用可能であり,検査報告の迅速化や測定機器の集約化など,日常検査としての有用性は高いと考えられた。
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