医学検査
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技術論文
BD液状化検体細胞診用保存液における血液の影響に関する基礎的検討
川西 なみ紀則松 良明大﨑 博之坂東 史郎升野 博志田城 孝雄
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2015 年 64 巻 4 号 p. 475-482

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抄録

BDシュアパス法の保存液は婦人科用(シュアパスバイアル;Gyne)と非婦人科用に大別され,さらに非婦人科用保存液はサイトリッチレッド(Red)とサイトリッチブルー(Blue)の2種類が存在する。GyneとRedは溶血能と蛋白凝集抑制作用を有する。一方,Blueには溶血能や蛋白凝集抑制作用は無いとされているが婦人科,非婦人科に関わらず,細胞診検体における微量な血液の混入や蛋白の存在は肉眼では判断できない。そこで我々は,上記3種類の保存液の日常業務における運用方法の策定を行うことを目的として,擬似保存液を作製し,それぞれの保存液の溶血能力と蛋白凝集抑制作用について比較検討を行った。その結果,①Blueでは,溶血能力がGyneやRedよりも弱いために,血液は完全に溶血せず,Ghost赤血球や血液残渣が標本全体に塗抹されるため,目的とする細胞の塗抹量が十分でない場合がある。②GyneとRedは溶血能を有し,さらにホルムアルデヒドを含むため,メチレン架橋による蛋白凝集抑制作用を有する。しかし,GyneはRedよりもホルムアルデヒド濃度が低いため,時間経過とともに蛋白凝集抑制作用が低下することが明らかになった。したがって,Gyneでの長時間の細胞保存は,目的とする細胞の塗抹量が十分でない場合があることを認識する必要がある。

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© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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