医学検査
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症例報告
尿中酸性尿酸アンモニウム結晶を認めたネフローゼ症候群の4小児例
松本 正美田中 佳田中 千津中川 静代柳田 善為永田 勝宏藤木 拓磨飯沼 由嗣
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2015 年 64 巻 5 号 p. 541-547

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抄録

近年,尿沈渣中の酸性尿酸アンモニウム(ammonium acid urate; AAU)結晶が結石形成の可能性から注目され始めている。今回我々は小児のネフローゼ症候群(nephrotic syndrome; NS)で尿沈渣中にAAU結晶を認めた4例を経験したので報告する。症例は11歳,1歳,7歳,4歳のいずれも男児で,浮腫・高度の蛋白尿で入院し,ステロイド療法にて寛解後退院している。4例とも尿比重が高く尿量も少ない濃縮尿であり,入院期間中1–2回のみ尿中にAAU結晶を認めている。うち1症例では同日にバルーン先端に詰まったAAU結石を認めた。結石の形成機序は不明な点も多いが,小児のNSにおいてはロタウイルス腸炎でみられるような下痢・嘔吐を伴わなくとも強い脱水と尿の濃縮が起こり,AAU結晶が生成されるものと思われた。尿中の結晶出現はその成分の飽和状態を示すものであり,小児のNSにおいてもAAU結石症による急性腎後性腎不全発症の危険性を示唆する重要所見である。またAAU結晶の出現時期はいずれもNSの病勢の強い時期ではあるものの,尿の蛋白・比重・尿量の時系列データからは回復する直前に出現している傾向が推察された。

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© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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