2015 年 64 巻 5 号 p. 610-616
花粉症は,花粉によって引き起こされるI型アレルギー疾患である。特に日本では,スギ花粉症の罹患者数は年々増加傾向にあるが,今後も継続的な大量飛散等により,罹患者数の増加や低年齢化が予想されている。 花粉飛散はその地形や気候変動の影響を大きく受けるため,地域に密着した情報提供は抗原回避や花粉曝露への対策に活用でき,その意義は非常に大きいと考えられる。また,特異的IgE抗体検査の結果と共に花粉飛散情報を活用することは,罹患者のQOL向上にも役立つ。そこで我々は,当研究所におけるスギ花粉飛散状況を把握するため,2012年~2014年に花粉飛散数の計測を行い,当研究所におけるスギ特異的IgE抗体検査の受託件数及び陽性率との関連を検討した。花粉飛散数は受託件数及び陽性率に影響することが示唆された。前年の飛散状況や気候等の影響を大きく受けるため,地域に根ざした調査や情報提供の活用が重要である。