抄録
茨城県の平均寿命は全国平均に比べ,男性で0.5歳,女性で0.6歳低いと言われている(茨城新聞2013年8月4日)。この事実に対し,救命救急センターまでの距離や人口10万人当たりの病床数および疾患別標準化死亡比が平均寿命にどのように影響しているかを検討した。検討結果は,以下のとおりである:(1)茨城県全体では,心疾患および肺炎による標準化死亡比が救命救急センターまでの距離と有意な正の相関があった。(2)男女別では,男性の平均寿命を目的変数として重回帰分析を行った結果,有意な相関が見られたのは脳血管疾患,糖尿病および肺炎による標準化死亡比(負の相関)ならびに人口10万人あたりの病床数(正の相関)であった(糖尿病による標準死亡比は全国下位から2位であった)。一方女性の平均寿命は,糖尿病および心疾患の標準化死亡比と有意な負の相関があった(糖尿病による標準死亡比は全国下位から5位であった)。(3)救急医療体制の改善(距離の短縮)と心疾患の標準化死亡比の低下との相関は有意ではなかった。これは,ドクター・ヘリ事業の整備により地域差が小さくなったためと思われる。しかし,平均寿命が全国ワースト50位以内となっている鹿行地区の対策が急がれる。対策として,病床数を増やすことは医療費の問題もあり,容易ではないかもしれない。糖尿病,心疾患,脳血管疾患などの生活習慣病の対策を行うことで効果が期待できよう。