2015 年 64 巻 6 号 p. 755-759
Thymus and activation regulated chemokine(TARC)は統一名称CCL17を有するケモカインで,即時型過敏症においてはアレルゲンがTh2細胞の活性化を誘導する際に発現が増加し,血中濃度が著増する。血清TARC値はアトピー性皮膚炎の日常診療において重症度や病勢の客観的指標として用いられている。2014年4月,HISCL®TARC試薬を使用したCLEIA法による血清TARC値測定が保険適用となった。これにより従来法に比べ測定時間が著明に短縮し,患者は来院当日にアトピー性皮膚炎の診断や病態把握を行うことが可能となった。今回,筆者らは本測定法に対する高濃度域試料を含んだ測定幅全域にわたる基礎的検討を行ったので報告する。対象は当院にて血清TARCを測定した患者の残余検体及び当院職員の血清合計51例。これを用いて同時再現性,日差再現性,希釈直線性,相関性,共存物質の影響について検討した。結果はいずれも良好で,特に血清TARC値50,000 pg/mL以上の検体を用いて希釈直線性を確認できた。本検討により,HISCL®TARC試薬を用いたCLEIA法による血清TARC測定法は当院の日常ルーチン検査業務に問題なく導入できることが分かった。今後,アトピー性皮膚炎の早期診断,早期治療,フォローアップに貢献できるものと思われる。