抄録
我々は,抗菌薬長期投与をうけた患者2名から,ヒツジ血液寒天培地M58で非典型的集落である「微小集落」を示し,グラム陽性球菌用培地のコロンビアCNA 5%ヒツジ血液寒天培地(CNA)で典型的集落を示したMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)を分離した。そこで,各メーカーの血液含有培地やMRSA選択培地を用いて,保存菌株を好気培養,5%炭酸ガス培養および嫌気培養し,発育状況を5日間観察した。血液含有培地では,CNAとヒツジ血液寒天培地M70は1日目で典型的集落を示したが,多くの培地は非典型的集落を示した。MRSA選択培地では未発育が多かった。微生物感受性分析装置Microscan WalkAway 96 SI(好気培養)での測定は発育不十分で測定不能となり,パネルを5%炭酸ガス培養および嫌気培養した場合では,Methicillin-sensitive Staphylococcus aureusやStaphylococcu capitis subsp. capitisとなり誤同定となった。MRSA検出において,非典型集落の存在を念頭におき,抗菌薬の長期投与患者ではMRSA選択培地に加えて非選択培地で培養する必要がある。そして,培地による発育性の差異がみられた場合には,患者情報の検索や発育性を用いない検査法での確認を実施し,注意深く判断する必要があると考えられた。