医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
症例報告
肝細胞癌の治療中に自己免疫性溶血性貧血を発症した1例
近岡 知剛相馬 史川平 宏田中 博山舘 周恒
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 65 巻 1 号 p. 51-54

詳細
抄録

症例は67歳の男性。肝細胞癌(HCC)の治療目的で2011年11月に入院し肝切除術を行ったが,再発のため入退院を繰り返していた。その間に,早期胃癌と食道静脈瘤が見つかり,ヘリコバクター・ピロリの除菌を含めた治療も行っている。除菌から10ヶ月後の2013年5月に上部消化管出血を認め,Hb 6.9 g/dLと重度の貧血となり輸血を実施した。その際の赤血球抗体スクリーニングが陽性で,精査を行ったところ温式不規則性抗体を認めると同時に,直接クームス試験も陽性となり,赤血球抗体の存在が明らかになった。さらに,ハプトグロビンが10 mg/dL以下であったことなどから,貧血の原因は上部消化管出血に加え,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を発症していることが考えられた。その発症原因について調査したところ,過去にタケプロンの服用で薬疹を認めたため服用を中止していたが,ヘリコバクター・ピロリの除菌時に,タケプロンが含まれる混合薬のランサップを服用し,Hbが徐々に低下したことが明らかになった。その後,タケプロンは投与されず,貧血は徐々に回復しランサップ投与後20ヶ月で直接・間接クームス試験共に陰性となった。以上のことから,本症例はタケプロンにより薬剤誘発性AIHAを発症した症例であると考えられた。

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top