医学検査
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65 巻, 1 号
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総説
  • 八木 朝子
    原稿種別: 総説
    2016 年65 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは,脳波,顎筋電図,眼球運動,気流,呼吸運動,動脈血酸素飽和度,心電図,前脛骨筋筋電図などを終夜にわたり同時に記録する。睡眠と覚醒の区別,睡眠の質と量を評価し,睡眠を妨げる睡眠時無呼吸,周期性四肢運動障害,ナルコレプシー,てんかん発作やレム睡眠行動障害などの同定と重症度評価が可能な検査である。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の有用性を活かすためには,映像や音声を同時に記録し,専任の臨床検査技師によるモニタリング(監視)下で行うことが求められる。しかしながら装置や設備コストや人件費がかかり,また技師の教育や技能の習得に時間がかかることもあり,実施できる施設は限られている。睡眠ポリグラフ検査(PSG)の判定結果は,各種睡眠障害の診断に直接的に寄与するため,これらを担う臨床検査技師の職務は重責である。適正かつ安全に実施し,正確に判定する能力が求められる。本稿では,睡眠ポリグラフ検査(PSG)の標準的な測定および判定について,そして我が国における普及状況について述べる。
原著
  • 倉田 貴規, 柴原 聡美, 宮島 悦子, 田中 伯香, 橋本 卓典, 牧 俊哉, 加藤 秀樹, 湯浅 典博
    原稿種別: 原著
    2016 年65 巻1 号 p. 12-17
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    【背景】近年,赤血球分布幅(RDW)が心筋梗塞,心不全,高齢者の予後と関連することが報告されるようになったが,末梢動脈疾患(PAD)の診断・予後とRDWとの関連について検討した研究は少ない。【目的】PADの診断・予後予測に関するRDWの意義を明らかにする。【対象と方法】対象は2009年から5年間に足関節/上腕血圧比(ABI)と血液検査(ヘモグロビン濃度(Hb),平均赤血球容積(MCV),RDWの測定)を行った40歳以上の患者2,046例である。ABIは左右の低い方の値を用い,0.90以下をPADとした。【結果】全症例の平均ABIは1.05 ± 0.17で,0.90以下(PAD)は288人(14.1%)であった。全症例の平均RDWは14.4 ± 1.7で,ABIとRDWにはy = –0.012x + 1.227(x: RDW, y: ABI, R = 0.125, p < 0.0001)と有意な相関を認めた。PAD患者群(PAD群)は非PAD患者群(非PAD群)よりも有意に年齢が高く,RDWが大きく,Hbが低かった。多変量解析では,年齢,RDW,HbはABI ≤ 0.90と関連する有意な独立因子であった。PAD群は非PAD群よりも有意に生存率が低かった。また,PAD群のうちRDW 15.1以上の患者は15.0以下の患者と比較して有意に生存率が低く,これは非貧血患者で顕著であった。【結論】RDWはPADの診断・予後予測に有用である。
  • 橋本 剛志, 梅橋 功征, 富園 正朋, 髙永 恵, 橋本 恵美, 佐々木 康雄
    原稿種別: 原著
    2016 年65 巻1 号 p. 18-24
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    大動脈弁閉鎖不全症(Aortic Regurgitation; AR)は大動脈弁の閉鎖不全により大動脈から左心室へ血流の逆流を生じる病態で,重症化し症状が出現すると外科的治療を要するため重症度を評価することは重要である。足関節上腕血圧比(Ankle Brachial Pressure Index; ABI)は閉塞性動脈硬化症のスクリーニング検査として用いられ,AR患者において偽高値になると言われている。今回,ABI検査にて計測される項目と心エコー図検査によるARの重症度を後方視的に比較検討した。対象は期間内に当院にてABI検査と心エコー図検査による逆流率の計測を同時期に行った患者85名(平均年齢70.2 ± 10.8歳,男性60名,女性25名)に対して検討した。結果,ABI検査にて得られる項目のうち,AR重症度と有意差を認めたのは下肢脈圧(p < 0.01)とABI(p < 0.01)だった。下肢脈圧はAR軽度-重度間(p < 0.01)と中等度-重度間(p < 0.05)に有意差を認めた,ABIは全ての重症度間(軽度-中等度;p < 0.05,中等度-重度;p < 0.01,軽度-重度;p < 0.01)に有意差を認めた。AR逆流率との相関関係は,下肢脈圧(r = 0.43, p < 0.01)とABI(r = 0.45, p < 0.01)に有意な相関関係を認めた。ROC解析では重度ARとなる下肢脈圧のcut off値は104 mmHg,ABIのcut off値は1.32だった。今回の検討より,下肢脈圧とABIはARの重症度と関連が示唆され,ABI検査はARの重症度評価の一助になり得ると考えられた。
  • 前田 文江, 山村 修, 植田 信策, 齋藤 佐, 柴田 宗一, 濱野 忠則, 浜田 敏彦, 木村 秀樹
    原稿種別: 原著
    2016 年65 巻1 号 p. 25-31
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    2004年の新潟県中越地震以降,避難所における深部静脈血栓症(deep vein thrombosis; DVT)の増加が注目され,その発症とリスク要因について様々な検討がなされている。ヒラメ静脈径拡張はDVTのリスク要因であるとされるが,拡張の関連要因については不明な点が多い。今回我々は東日本大震災被災地の仮設住宅において行ったDVT検診を通じ,ヒラメ静脈径拡張の関連要因について検討を行った。2012年9月と2013年9月に宮城県亘理郡亘理町,山元町の仮設住宅や自宅在住の被災者339名を対象とした。問診により受診者背景を聴取後,携帯型超音波装置を用い,座位にて膝窩静脈以降の末梢静脈内血栓検索と両側のヒラメ静脈最大径測定を行った。その結果,静脈拡張陽性群(≥ 9.0 mm)を41名に認めた。拡張陽性群において心疾患既往者は18名(44%)で拡張陰性群における既往者78名(26%)と比較し有意に高値であった(p < 0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果,心疾患の既往はヒラメ静脈拡張の独立した危険要因であった。また,DVT陽性群での拡張陽性者は6名(30%)でDVT陰性群における拡張陽性者35名(11%)と比較し有意に高値であった(p < 0.05)。被災地におけるヒラメ静脈最大径測定は,心疾患の存在やDVT発生リスクの把握に有用となる可能性がある。
  • 野崎 司, 間瀬 浩安, 田中 由美子, 山﨑 真一, 篠生 孝幸, 浅井 さとみ, 宮地 勇人
    原稿種別: 原著
    2016 年65 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    尿沈渣検査の赤血球判定について測定者(臨床検査技師)の目視判定における技術誤差をモニタリングするため,潜血反応を用いた精度管理方法を考案した。この方法は,技師が鏡検した対象患者層が異なっていても同一基準で評価が可能で,技師間差・技師内差を知ることができる。本法実施前の技師間における変動係数は12.4~14.1%(2013年5月~7月)であったが,実施1年後では7.4~10.0%(2014年5月~7月)と技師間差の収束を認めた。本法は特別な装置やアプリケーションを必要とせず,日常レベルで容易に実施可能な精度管理方法である。
  • 鈴木 駿輔, 内藤 真希, 平松 直樹, 西川 伸一, 薗田 明広, 坂本 裕樹, 坂口 元一, 島田 俊夫
    原稿種別: 原著
    2016 年65 巻1 号 p. 38-44
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    心不全の重症度評価は,従来右心カテーテル検査法により行われているが,非観血的に肺動脈圧をはじめとする血行動態評価が行える経胸壁心臓超音波検査(TTE)法は,心不全診療の主流となりつつある。一方,BNPは心不全診療を支える客観的な心不全バイオマーカーとして広く普及している。本研究は,TTEより得られる推定肺動脈圧(PASP, PADP)を含む各種パラメーターと,BNP濃度を比較検討することにより,心不全重症度評価におけるBNPの有用性を検討することである。研究対象はTTEとBNP採血が同日に実施できた連続476症例とした。BNP濃度を中央値で分けBNP categoryを従属変数とし,TTEで得られた各種パラメーターを独立因子として多変量ロジスティック回帰分析を行い有意な変数を抽出した。有意な因子を四分位数による重症度で分類し,一元配置分散分析(ANOVA)にて各群間におけるBNP濃度を比較検討した。有意な因子として,年齢,BMI,シスタチンC,E/A,E/e’,PASP,LVMIが抽出された。ANOVAの結果は,年齢,シスタチンC,E/A,E/e’,PASP,LVMIではコントロール群(Category I)に比べて各因子のレベルおよび重症度が上がるに従い,BNP濃度も有意に高値を示した。BMIではレベルが上がるに従い,BNP濃度は有意に低値を示した。BNPは心不全の客観的重症度を正確に反映するPASPによる心不全の重症度と密接な関連が認められることから,心不全の重症度評価と治療評価のモニターとして使用できる優れた心不全マーカーであると結論する。
  • 長谷川 瞳, 酒井 昭嘉, 仲島 さより
    原稿種別: 原著
    2016 年65 巻1 号 p. 45-50
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    当院では2009年12月よりC型肝炎ウイルスの遺伝子型(genotype),core領域(core aa70, core aa91)・インターフェロン感受性領域(ISDR)のアミノ酸変異の解析を実施し,2014年9月からはNS3領域・NS5A領域の薬剤耐性変異の解析を行ってきた。genotype判定は315例を対象とし,1a:3例(1.0%),1b:192例(61.0%),2a:80例(25.4%),2b:33例(10.5%),3a:1例(0.3%),3b:1例(0.3%),混合型5例(1.6%)であった。1bと判定された192例のうち156例に対し,core aa70,core aa91およびISDRの解析が可能であった。core aa70に変異を認めたものは60例(38.5%)であり,core aa91に変異を認めたものは48例(30.8%)であった。ISDRの解析ではWild type(変異なし)は66例(42.3%),Intermediate type(変異数1~3)は77例(49.4%),Mutant type(変異数4以上)は13例(8.3%)であった。薬剤耐性変異は94例を対象とし,NS3領域では36例(38.3%),NS5A領域では23例(24.5%)にアミノ酸変異を認めた。これらの解析によって,より詳細な治療効果予測が可能となった。
症例報告
  • 近岡 知剛, 相馬 史, 川平 宏, 田中 博, 山舘 周恒
    原稿種別: 症例報告
    2016 年65 巻1 号 p. 51-54
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性。肝細胞癌(HCC)の治療目的で2011年11月に入院し肝切除術を行ったが,再発のため入退院を繰り返していた。その間に,早期胃癌と食道静脈瘤が見つかり,ヘリコバクター・ピロリの除菌を含めた治療も行っている。除菌から10ヶ月後の2013年5月に上部消化管出血を認め,Hb 6.9 g/dLと重度の貧血となり輸血を実施した。その際の赤血球抗体スクリーニングが陽性で,精査を行ったところ温式不規則性抗体を認めると同時に,直接クームス試験も陽性となり,赤血球抗体の存在が明らかになった。さらに,ハプトグロビンが10 mg/dL以下であったことなどから,貧血の原因は上部消化管出血に加え,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を発症していることが考えられた。その発症原因について調査したところ,過去にタケプロンの服用で薬疹を認めたため服用を中止していたが,ヘリコバクター・ピロリの除菌時に,タケプロンが含まれる混合薬のランサップを服用し,Hbが徐々に低下したことが明らかになった。その後,タケプロンは投与されず,貧血は徐々に回復しランサップ投与後20ヶ月で直接・間接クームス試験共に陰性となった。以上のことから,本症例はタケプロンにより薬剤誘発性AIHAを発症した症例であると考えられた。
  • 丸山 恵理, 佐藤 実, 小松 博史, 澁谷 斉, 清水 力
    原稿種別: 症例報告
    2016 年65 巻1 号 p. 55-63
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性。2011年5月特発性心室細動の診断で植込み型除細動器(ICD)を装着し社会復帰。2012年9月自宅で突然意識消失,10数秒後に意識回復するも,ICD植込み後初の意識消失であったため入院。12誘導ホルター心電図により心室細動とICDの作動が確認された。心室細動のトリガーとなる心室期外収縮は左脚ブロック上方軸であり,このことから起源を右室下壁と推定し,アブレーションを施行した。さらに治療前後に12誘導ホルター心電図で認めた心室期外収縮について連結期と先行RR時間によるプロット解析を試みた。治療前後で回帰直線を比較すると勾配が明らかに異なり,治療効果の判定に有効であることが判明した。また,連結期/先行RR時間比を時間軸に並べることにより次の事が明らかとなった。本症例の心室細動発症前2時間には,さらにその前2時間と,心室細動発症後2時間に比較して,先行RR時間が有意に長く,かつ,連結期/先行RR時間比が有意に小さい心室期外収縮が繰り返されていた。先行RR時間の延長により再分極相に不安定要素が生じ,次の連結期/先行RR時間比が小さいことにより受攻期への刺激が続き,受攻性が高まり,心室細動発症に至ったのではないかという発症機序を推察した。更なる症例の集積と解析が望まれる。
  • 城尾 可奈, 荒川 裕也, 野口 依子, 岡崎 葉子, 佐藤 伊都子, 中町 祐司, 林 伸英, 河野 誠司
    原稿種別: 症例報告
    2016 年65 巻1 号 p. 64-69
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    コリンエステラーゼ(ChE)はコリンエステルをコリンと有機酸に分解する酵素で,アセチルコリンのみを加水分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)とブチリルコリン等に作用しコリンと有機酸に分解するブチリルコリンエステラーゼ(BChE)の2種類がある。BChEは肝細胞で産生される蛋白で,肝臓の蛋白合成能の指標として肝機能検査に用いられているが,BChEのみ低値となる先天性BChE欠損症が報告されている。遺伝性BChE欠損症では手術時に使用される筋弛緩薬サクシニルコリンの分解が遅れて麻酔後長時間無呼吸を起こす危険性があり注意が必要である。今回我々はBChEが極低値な1症例を経験し,その遺伝子を解析した結果,エクソン2のコドン315でのアデニン(A)の挿入(S型)ホモ接合体を認めた。そのため,下流のコドン322にストップコドンが形成されることが判明した。また,エクソン4のコドン539での遺伝子置換ホモ接合体(K-variant)も認めた。
技術論文
  • 小林 悠梨, 石塚 敏, 安尾 美年子, 三浦 ひとみ, 岩藤 和宏, 中島 一朗, 渕之上 昌平
    原稿種別: 技術論文
    2016 年65 巻1 号 p. 70-77
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    臓器移植では,液性拒絶反応の免疫学的評価としてドナー特異的抗HLA抗体(donor-specific HLA antibodies; DSA)を検出することが重要であると考えられている。本研究では,flow cytometry lymphocyte crossmatch-IgG test(FCXM-IgG)検査法および解析法の統一化に向けた基礎的検討を行った。東京女子医科大学腎臓外科に外来受診された生体腎臓移植希望患者78症例とドナーリンパ球を使用し,FCXM-IgGとLABScreen single-IgGを測定した。FCXM-IgG MESFとLABScreen single-IgG nMFIの比較では,Linear valuesとChannel valuesにおいてTcell・Bcell-IgG共に相関係数およそ0.8と良好であった。本研究の結果から,LABScreen single-IgGで検出されるnatural antibodyなどの影響も推測されたが,本研究において良好な相関性が得られたことによりそれぞれの蛍光強度から近似曲線を作成し定量評価できる可能性が期待される。
  • 龍見 重信, 西川 武, 鈴木 久恵, 竹内 真央, 松尾 郁, 福井 義雅, 田中 京子, 大林 千穂
    原稿種別: 技術論文
    2016 年65 巻1 号 p. 78-83
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルマリン単独固定を行うようになって以来,アザン染色をはじめとする膠原線維染色では膠原線維と他の組織成分を明瞭に染め分けることが期待できなくなった。そのため,10%重クロム酸カリウム・10%トリクロロ酢酸等量混合液による媒染剤が考案され,現在一般的に利用されている。しかし,重クロム酸カリウムは危険性の高い試薬であり,代替媒染剤の必要性は高い。そこで,アザン染色における数種類の媒染剤の有用性を検討した。その結果,ブアン液およびピクリン酸単独使用による媒染効果が認められ,膠原線維と他の組織成分との関係を明瞭に染め分けることが可能であった。ブアン液は特別化学物質障害予防規則で規制されるホルマリンを含み,ケミカルハザードの問題がある。したがって,アザン染色の媒染剤として飽和ピクリン酸単独使用により60℃30分作用させる方法は,従来の10%重クロム酸カリウム・10%トリクロロ酢酸等量混合液に替わりうる。そして,より安全かつ良好な染色性が得られるため,普及することが望まれる。
  • 柴田 真衣子, 間瀬 浩安, 篠生 孝幸, 野崎 司, 椎名 豊, 豊田 雅夫, 浅井 さとみ, 宮地 勇人
    原稿種別: 技術論文
    2016 年65 巻1 号 p. 84-90
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    HbA1c測定は糖尿病診療に重要である。我々はHPLC法による新規HbA1c分析装置(HLC-723G11)の検討を行った。同時再現性,日差再現性の変動係数(CV%)は,それぞれ0.00から0.01%,0.70から0.84%であった。DM-JACK IIとの相関性はy = 1.043x − 0.23,r = 0.990であった。共存物質の影響(ビリルビンC,Fおよび乳糜)の影響はなかった。修飾ヘモグロビンではわずかな影響が認められたが,本実験方法は高濃度の実験のため,実際の患者検体で遭遇する濃度において有意な影響はないと考えられた。HLC-723G11は良好な基本性能を示し,糖尿病診療に有用である。
  • 吉野 直美, 山田 依里, 圓田 兼三, 馬場 尚志, 飯沼 由嗣
    原稿種別: 技術論文
    2016 年65 巻1 号 p. 91-97
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルス(HBV)持続感染者への治療は大きく進歩しており,それに伴いHBV関連マーカーの意義も変化しつつある。HBs抗原は,HBVのエンベロープ蛋白であるが,従来の診断マーカーとしての定性検査に加え,近年HBs抗原量がB型肝炎治療の効果判定や予後予測における有用なマーカーとなることが報告され,その定量測定が臨床上重要となっている。今回我々は2013年9月に富士レビオ(株)から発売された化学発光酵素免疫測定法を原理とした高感度HBs抗原定量試薬「ルミパルスHBsAg-HQ」について,基本性能の評価とともに,従来のHBs抗原検査試薬である「ルミパルスII HBsAg」との比較検討を行った。その結果,ルミパルスHBsAg-HQは,同時再現性,日差再現性において良好な性能を示し,共存物質の影響も認められなかった。従来試薬との比較においては,判定一致率は98.6%(205/208)であった。不一致であった3件は,HBs抗原抑制試験の結果から,従来試薬の偽陰性2件,同じく偽陽性1件と考えられた。以上より,ルミパルスHBsAg-HQは十分な基本性能を持ち,従来試薬より正確かつ高感度にHBs抗原を検出可能なことが示唆され,B型肝炎治療の効果判定や予後予測,de novo B型肝炎対策に繋がる有用な情報を,臨床医に提供できる試薬と考えられた。
  • 山田 みゆき, 阿部 知世, 佐藤 直仁, 佐藤 智明, 森兼 啓太
    原稿種別: 技術論文
    2016 年65 巻1 号 p. 98-102
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    シスメックス社のHISCL-2000i(HISCLと略す)のHBs抗原測定に関する評価を,富士レビオ社のルミパルス プレストII(ルミパルスと略す)およびアボット ジャパン社のアーキテクトアナライザーi2000SR(アーキテクトと略す)の2機種と比較し,評価した。検討内容は,HISCLの基礎的検討,3機種でのマイクロフィブリンの影響,陽性検体の一致率,変異リコンビナント試料に対する反応性についである。HISCLの基礎的検討として同時再現性は1.4~5.8%,日差再現性は0.6~3.8%であった。最少検出感度は0.008 IU/mLであった。3機種を比較検討した結果ではマイクロフィブリンの影響は,ルミパルスで偽陽性の結果があったが,他2機種では影響がなかった。定量法のHISCLとアーキテクトの相関性は良好であったが,両機種の測定値に差が認められた。判定一致率はルミパルスで判定保留域の検体はHISCLおよびアーキテクトは陽性の結果であった。HBs抗原変異株の検出能はHISCL,アーキテクトは準備した試料全てを検出できたが,ルミパルスはD144-G145R変異株の検出ができなかった。以上の検討結果からHISCL分析装置と専用試薬であるHISCL-HBsAg試薬によるHBs抗原定量試薬は検査試薬として高感度であり,広範囲な測定範囲を持ち,変異株の検出においても良好な結果が得られた。
資料
  • 白石 和仁, 大西 弥生, 近藤 吉将, 中田 浪枝, 山口 直美, 渡邊 亮司, 武田 伸也, 赤尾 智広
    原稿種別: 資料
    2016 年65 巻1 号 p. 103-109
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    健康診断の評価項目として,腹部超音波検査(以下,USとする)を実施している施設は多くあるが,その結果についての詳細な報告は少ない。当院でも健診項目の一つとしてUSを実施しているが,一定期間での結果集計はなされていなかった。今回,当院での現状を把握する目的で,各疾患の割合及び傾向について集計を行った結果,何らかの異常あるいは正常変異を伴った有所見率は高頻度(86.7%)であり,臓器別では,肝,腎,胆で全体の約8割を占めていた。性別では,男性に脂肪肝,胆嚢ポリープ及び腎嚢胞が高頻度に認められ,特に脂肪肝の割合は,ほぼ受診者の2人に1人と非常に多く認められた。女性では胆嚢結石が60歳以上の高齢者に有意に多く認められた。又,男女共に,加齢に伴い嚢胞性病変(肝嚢胞,腎嚢胞)が増加した。頻度は少ないものの期間中2名(0.11%)の悪性疾患も認められた。今回の結果から,検査対象のほとんどが臨床症状を認めない受診者ではあったが,有所見率は高頻度であり,生活習慣に起因すると思われる結果も多く,保健指導の活用にもUSの結果は有用であると思われた。非浸襲的検査であるUSは,今後も益々,健診(検診)の場で広く活用されるものと思われる。
  • 安藤 潤子, 鐵原 拓雄, 小郷 正則, 髙松 邦樹
    原稿種別: 資料
    2016 年65 巻1 号 p. 110-114
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    多焦点バーチャルスライドはスライドガラス上の標本をデジタル化したものである。焦点が変えられることで対象成分を立体的にとらえられ,実際の顕微鏡と同様な観察が可能である。今回,当院で一般検査学実習(2週間)を終えた学生を対象に,写真と多焦点バーチャルスライドで同一尿沈渣成分を用いた試験を実施して正答率を比較し,有用性の検討を行った。多焦点バーチャルスライドのほうが,焦点を変えられることで成分の厚み,円柱の含有成分,脂肪球の輝きなどが理解しやすく,写真よりも正答率は上昇し,その有用性が確認された。しかし,バーチャルスライド単独の学習では,顕微鏡で見る細胞の大きさとして把握しにくいという問題点もあり,その点において顕微鏡による観察は必要である。教育段階の早い時期から併用学習を行い,細胞観察のコツを教えていくことで教育効果が上がるのではないかと思われた。
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