医学検査
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症例報告
12誘導ホルターにて心室細動および植込み型除細動器の作動を観察しえた症例におけるアブレーション治療効果の評価と発症機序の考察―心室期外収縮の連結期・先行RR時間の解析を通して―
丸山 恵理佐藤 実小松 博史澁谷 斉清水 力
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2016 年 65 巻 1 号 p. 55-63

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抄録
症例は65歳男性。2011年5月特発性心室細動の診断で植込み型除細動器(ICD)を装着し社会復帰。2012年9月自宅で突然意識消失,10数秒後に意識回復するも,ICD植込み後初の意識消失であったため入院。12誘導ホルター心電図により心室細動とICDの作動が確認された。心室細動のトリガーとなる心室期外収縮は左脚ブロック上方軸であり,このことから起源を右室下壁と推定し,アブレーションを施行した。さらに治療前後に12誘導ホルター心電図で認めた心室期外収縮について連結期と先行RR時間によるプロット解析を試みた。治療前後で回帰直線を比較すると勾配が明らかに異なり,治療効果の判定に有効であることが判明した。また,連結期/先行RR時間比を時間軸に並べることにより次の事が明らかとなった。本症例の心室細動発症前2時間には,さらにその前2時間と,心室細動発症後2時間に比較して,先行RR時間が有意に長く,かつ,連結期/先行RR時間比が有意に小さい心室期外収縮が繰り返されていた。先行RR時間の延長により再分極相に不安定要素が生じ,次の連結期/先行RR時間比が小さいことにより受攻期への刺激が続き,受攻性が高まり,心室細動発症に至ったのではないかという発症機序を推察した。更なる症例の集積と解析が望まれる。
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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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