2016 年 65 巻 1 号 p. 110-114
多焦点バーチャルスライドはスライドガラス上の標本をデジタル化したものである。焦点が変えられることで対象成分を立体的にとらえられ,実際の顕微鏡と同様な観察が可能である。今回,当院で一般検査学実習(2週間)を終えた学生を対象に,写真と多焦点バーチャルスライドで同一尿沈渣成分を用いた試験を実施して正答率を比較し,有用性の検討を行った。多焦点バーチャルスライドのほうが,焦点を変えられることで成分の厚み,円柱の含有成分,脂肪球の輝きなどが理解しやすく,写真よりも正答率は上昇し,その有用性が確認された。しかし,バーチャルスライド単独の学習では,顕微鏡で見る細胞の大きさとして把握しにくいという問題点もあり,その点において顕微鏡による観察は必要である。教育段階の早い時期から併用学習を行い,細胞観察のコツを教えていくことで教育効果が上がるのではないかと思われた。