医学検査
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原著
超音波診断装置による交差感染防止対策
小川 綾乃五嶋 玲子小柳 紀子高橋 明子髙梨 昇浅井 さとみ宮地 勇人
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2016 年 65 巻 2 号 p. 172-180

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抄録
ヒトが被検者となる生理機能検査の検査実施では,交差感染(間接接触感染)のリスクがあり,その効果的な防止対策は患者診療の安全確保においてきわめて重要である。本研究は,超音波検査実施における交差感染の効果的な防止策を明らかとするため,超音波診断装置と付属品・消耗品(以下,超音波診断装置)の清掃・消毒の状況について調査し,結果に基づく改善策を検討した。超音波診断装置の検査実施後の清掃・消毒の状況は,11名の検査者を対象として,手指衛生調査用蛍光塗料の塗布後,ブラックライトを用いて調査した。その結果,日常的に触れるトラックボール,操作パネルなどに拭き残しが多くみられた。検査者によっては,ゲル容器,タッチパネル右側,バーコードリーダー,患者側の装置側面などの拭き取りが行われていなかった。これらより,拭き残しの主な原因は,装置側の要因として装置側面の凹凸,検査者側の要因として教育の浸透不足が示唆された。超音波検査実施における交差感染のリスク低減には,超音波診断装置の清掃・消毒に関するコンプライアンス調査結果のフィードバックによる教育と啓発とともに,リスク評価を踏まえた標準的な作業手順書作成やチェックリストに基づくコンプライアンス向上が必要である。
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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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