医学検査
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原著
分光測色計を利用したヘマトキシリン・エオジン染色の染色性管理に関する基礎的検討
柚木 浩良田中 浩一公益社団法人愛知県臨床検査技師会病理細胞検査研究班
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2016 年 65 巻 3 号 p. 251-259

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抄録
ヒトの視覚は色を識別する能力に優れているが,個人差があり色の評価は主観的となる。近年,分光測色計を用いることで製造業(衣料品など)や芸術などの分野では客観的に色の評価を行うことが可能となっている。今回我々は病理診断に用いられるヘマトキシリン・エオジン染色(以下HE染色)の染色性の評価に分光測色計を用いることは出来ないかと考え検討を行った。愛知県内の18施設に,ヘマトキシリン単染色標本,エオジン単染色標本,HE染色標本の計3枚の標本作製を依頼し,各染色標本の色彩を分光測色計(コニカミノルタ社製CM-5)を用いて数値化した。その結果,各施設のHE染色標本間で差を認めたが,その差違は主としてエオジン染色液の色調の違いによると思われた。さらに各施設のヘマトキシリン溶液とエオジン溶液の染色性をそれぞれ「濃い」・「中間」・「薄い」の3種に分類し,様々な組み合わせにて染色したところ,エオジン溶液の染色態度がHE染色の染色性に大きく関与していることを確かめた。この結果は視覚に頼る主観的な評価と概ね一致していたが,分光測色計で数値化することにより,各施設の差異を客観的かつ詳細に分析することが可能であった。HE染色は病理診断の枢要であり,施設間差の少ない標準化された標本作製が求められる。我々の試みた分光測色計を用いた染色性の管理は客観的な評価を可能とし,HE染色標本の標準化に寄与するものと考える。
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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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