日本臨床麻酔学会誌
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総説
麻酔中の意識と記憶
土肥 修司
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2015 年 35 巻 1 号 p. 001-014

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抄録

  エーテル麻酔の成功から約170年,著者の経験は後半の一時にすぎないが,この40年間に,麻酔の理解も安全性も飛躍的に向上した.麻酔薬による意識,記憶,疼痛,運動機能への抑制効果は一様ではなく,おのおの薬の薬理特性によって異なる.麻酔の主要な構成要素である「無意識と無記憶」状態は,麻酔薬が視床を中心とした脳神経系ネットワークの統合を抑制して,環境との連絡が断たれたときに生じると理解されている.麻酔状態では自然睡眠中と異なり,記憶形成過程の増強はないが,「無意識なのか」「記憶の形成中なのか」を確実に検出できるモニターはない.本論文では,研究の歴史的流れを通して麻酔中の意識と記憶に関しての簡潔な総説を試みた.

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© 2015 日本臨床麻酔学会
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