医学検査
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技術論文
イオン化カルシウム測定における抗凝固剤の影響―低濃度ヘパリンとカルシウム調整済みヘパリンの比較―
持田 志穂齋藤 裕美赤津 哲山﨑 哲
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2016 年 65 巻 5 号 p. 526-532

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抄録

血液ガス分析で抗凝固剤として使用されているヘパリンはイオン化カルシウム(Ca2+)の測定に影響を与えることが知られている。IFCCのガイドラインでは,ヘパリン濃度を低濃度ヘパリン15 IU/mL以下,カルシウム調整済みヘパリン50 IU/mL以下での測定が推奨されている。今回,健常職員10名の静脈血を対象とし,低濃度ヘパリン(LH:テルモ),カルシウム調整済みヘパリン(BH:日本ベクトン・ディッキンソン)の2種類の血液ガス分析用採血キットを用いて,抗凝固剤を含まない血液を対照としてCa2+測定におけるヘパリンの種類や測定時のヘパリン濃度,また測定までの時間経過による影響を検討した。LHは今回検討したヘパリン濃度(2.8, 4.7, 14.0 IU/mL)のいずれでも臨床的許容範囲下限(−0.05 mmol/L)程度の低下を認め,また時間経過によってヘパリン濃度に依存した低下を認めた。BHは推奨ヘパリン濃度を大きく上回る濃度(160.0 IU/mL)で臨床的許容範囲を超える低下を認めた。今回の検討結果より,BHはLHと比べCa2+の低下は軽度であったため,Ca2+測定時はBHの使用が有用であると考えられた。ヘパリン濃度および時間経過によるCa2+値への影響を最小限にするためには,推奨採血量を採取し推奨ヘパリン濃度で,加えて特にLH使用時は採取後速やかに測定することが重要である。

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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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