医学検査
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症例報告
中枢神経浸潤を認めた多発性骨髄腫の1症例
久末 崇司宿谷 賢一田中 雅美常名 政弘大久保 滋夫増田 亜希子下澤 達雄矢冨 裕
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2016 年 65 巻 6 号 p. 685-689

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抄録

多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性疾患であり,貧血などの造血障害や骨融解,腎障害など,様々な症状を呈する。また,多発性骨髄腫の髄膜浸潤は非常に稀である。我々は,髄液検査にて計算盤による細胞検査時に異常な細胞を認め,その後の迅速な対応につながった髄膜浸潤を有する多発性骨髄腫の1症例を経験したので報告する。症例は65歳,男性。歩行障害にて近医を受診し,骨髄検査の結果から多発性骨髄腫と診断された。化学療法にて一旦は全身の腫瘍の縮小や消失を認めたが,その後,髄液検査にて形質細胞様の細胞を多数認めた。直ちに担当医へ連絡し,追加検査を実施。細胞表面抗原解析や細胞診検査の結果から多発性骨髄腫の中枢神経浸潤と診断された。髄液検査は検体採取後すぐに結果の報告が可能な検査である。髄液検査で異常な細胞を検出することは,その後の迅速な対応につながり,治療方針や患者の予後に影響するため,我々は常日頃から異常な細胞の検出を念頭に置いて髄液検査を実施することが重要であると考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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