臨床検査データ判読の指標である基準範囲について,現在,日本臨床検査標準協議会(JCCLS)により「共用基準範囲」の導入が進められている。このような基準範囲の共用化は多施設間のデータ連携においても不可欠である。岡山県では現在複数の基幹病院等で導入が進められており,当院でも院内のコンセンサスを得たのちに導入準備を進め,2016年7月から運用を開始した。また,併せて血算の単位表記を変更したことから,様々な部門システムや関連文書への影響が想定され,多くの確認・変更作業を要した。実際の変更作業では,検体検査システムおよび電子カルテシステムのマスタ変更,関連部門システムの変更,関連文書の変更,分析装置の設定変更,臨床ならびに患者への周知,WEB関連の変更など,その作業範囲は多岐にわたったが,事前の準備と関連部門の協力,また変更内容の周知徹底により,大きな混乱なく運用を開始した。現在,検査データは院内院外を問わず様々なシステムと連携しており,その整合性を確保しつつシステムの運用管理を行うことは検査部の責務であり,課題であると考えられた。今後,全国的に共用基準範囲の導入が進み,どのような場面でも同じ指標で検査データの判読が可能となることを期待する。