2018 年 67 巻 5 号 p. 779-784
当院検査室における抗酸菌検査動向調査を行ったので報告する。2012年10月から2017年9月の5年間において,当検査室でデータ管理している山梨勤労者医療協会(山梨勤医協)の医療機関での抗酸菌検出状況,年齢分布と性差,各検査項目の比較,薬剤耐性率,患者の臨床背景および非結核性抗酸菌症の診断・治療について検討した。5年間での抗酸菌培養陽性率は7.0%であり,結核菌(Mycobacterium tuberculosis; M. tuberculosis)35例(19.1%)非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria; NTM)148例(80.9%)であった。年齢は,どちらも70歳代以上の高齢層に多いが,M. tuberculosisは10~30歳代の若年層にもピークが見られた。性別では,M. tuberculosisが男性優位,NTMは女性優位であった。検査項目では培養検査の陽性率が90%以上と高率であった。患者の受診動機は一般的な風邪症状の他,X線異常などの無症状の方も多かった。初期診療を行うにあたり,今回の動向調査が参考にされることが望まれる。また,抗酸菌分離状況は地域性があるため,県内の動向を把握することは感染管理の観点から意義があることと思われた。