医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
症例報告
乳腺扁平上皮癌の1例
井関 文畠 榮原 稔晶稲垣 恵章安藤 善孝下山 芳江松下 正中村 栄男
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2018 年 67 巻 5 号 p. 809-816

詳細
抄録

乳腺の扁平上皮癌はまれで,急速に増大する特徴から予後不良とされる。今回われわれは,乳腺扁平上皮癌の1例を経験したので細胞学的特徴を中心に報告する。症例は60歳代女性で,検診で右乳房腫瘤を指摘され当院を受診した。腫瘤はDynamic MRIで遅延相におけるリング状増強効果を示した。穿刺吸引細胞診では,多数の壊死物質とリンパ球,少数の線維芽細胞を背景に,重積性の腫瘍細胞集塊や,孤立散在性の角化した腫瘍細胞を認めた。広めの細胞質を有する大小の細胞からなる集塊では,辺縁から突き出す約70 μmの大型細胞を認めた。大型細胞は濃いライトグリーンやオレンジ色の厚い細胞質を有し,中心に48 μmの巨大核を認めた。単調な楕円形核を有する細胞が結合性のよい流れるような配列を示す集塊では,p40免疫細胞染色において陽性の細胞が集塊の片側に偏るように染色された。小型の集塊では,すべての細胞がp40陽性を示す集塊と,p40陽性細胞と陰性細胞が混在する集塊とがみられた。病理組織学的には高分化な扁平上皮癌で,一部に腺癌から扁平上皮癌へと連続する移行部を認めた。ER,PgR,HER2は陰性,Ki-67陽性率は55%であった。今回,経験した乳腺扁平上皮癌は細胞診において,強い異型を示す角化細胞と移行部を反映した特徴的な細胞集塊がみられた。本報告例は予後良好であり,腫瘍の小さい早期に行われた細胞診検査は組織型推定に有用と考えられた。

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top