医学検査
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原著
新たな卵巣癌腫瘍マーカーHE4の性周期に着目した生理的変動について
髙野 佳美棚橋 洋子千葉 千恵子木村 孝司難波 真砂美津浦 幸夫
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キーワード: 卵巣がん, HE4, CA125, 閉経, 性周期
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2019 年 68 巻 4 号 p. 644-649

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抄録

卵巣癌の腫瘍マーカーとして2017年4月より保険適用となったヒト精巣上体タンパク4(human epididymis protein 4; HE4)は婦人科良性疾患や月経・妊娠の影響を受けにくいといわれている。日本人における実際の月経周期間の測定値変動や妊娠の影響の有無などを知るべく2つの検討を実施した。①CA125とHE4測定値について閉経前女性と閉経後女性の計62例で比較した。CA125で閉経前女性4名が参考基準値を超えた。1名は妊婦,3名は別日には参考基準値内に入ったことから,月経や妊娠の影響があったことが推測された。一方HE4は全員が参考基準値内であり妊娠や月経の影響を受けにくいことが示唆された。また閉経前女性と閉経後女性ではCA125,HE4ともに有意差があり,参考基準値を閉経の有無で分ける意義が確認された。②約1か月間2–3日ごとにCA125,HE4を測定した。閉経前女性は月経期間中CA125の上昇傾向が確認された(平均CV;21.47%)がHE4は月経の影響を受けず安定しており,(平均CV;8.90%)参考基準値を超える例は無かった。その生理的変動幅はHE4閉経前女性:2.7 pmol/L,閉経後女性:3.0 mol/L,男性:3.1 pmol/Lと小さく,HE4は月経や妊娠の影響を受けずCA125に比べ安定した腫瘍マーカーであることがわかった。

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© 2019 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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