【目的】代替キシレンであるクリアライトTM3とアルコールとの等量混合液を用い,自動包埋装置内で脱脂処理が可能か検討した。【対象】2017年2月~6月までの乳癌全摘手術検体9例(154ブロック)を対象とした。腫瘍を含む最大割面より通常の病理標本(A法)と隣接する検討用標本(B法)を作製した。【方法】1)脱脂処理の検討(A法)スターラーを用いアセトン内で3時間攪拌した。(B法)自動包埋装置エクセルシアASの第1槽目をクリアライトTM3/アルコール等量混合液とし,3時間処理を行った。2)脱脂処理後溶液中の中性脂肪の量を生化学自動分析装置TBAc16000にて測定した。3)自動薄切装置を用いて薄切状態を調べた。4)ヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin Eosin; HE)染色,ER/PgR/HER2の免疫組織化学染色(immunohistochemistry; IHC)とHER2 FISH染色を行い,染色性を比較した。【結果】1)中性脂肪の溶出量はB法に比してA法の方が多く,有意差(p = 0.0156)を認めた。2)組織収縮の程度は,B法に比してA法の方が強かった。3)全ブロック薄切可能であり,HE染色への影響は認めなかった。4)ER,PgR判定は9/9例(100%)で一致していた。5)HER2 IHCはHER2 FISH判定との不一致がA法で2/9例(22.2%)生じた。6)HER2 FISHの染色性は良好で評価可能であった。【結語】充分量のアセトン,および自動包埋装置内でのクリアライトTM3/アルコール混合脱脂液を用いれば両者とも3時間で十分な脱脂効果が得られるが,アセトンは膜蛋白評価が不一致となる傾向がみられた。