医学検査
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技術論文
健常者尿で検出された尿細管上皮細胞(丸細胞)の性状および形態学的特徴に関する検討
髙楊 ゆき富安 聡下川 洋輝黒田 優子佐藤 信也大田 喜孝永沢 善三宿谷 賢一
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2022 年 71 巻 1 号 p. 73-80

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抄録

尿沈渣検査では,小型で球状を呈する尿細管上皮細胞(丸細胞)の検出数は少なく,尿沈渣検査法2010に記載が無いため現在の報告対象には含まれていない。既報によると丸細胞は末期腎不全患者に多く認められ,尿細管腔の修復に関与していることが示唆されている。また,丸細胞を多数認める症例では,血清クレアチニン値が上昇し透析導入に移行する症例が多く,そのため,丸細胞は血清クレアチニン値と同様に腎機能評価の新規指標となるバイオマーカーであることが示唆されている。しかし,健常者尿における丸細胞の出現に関する報告はない。そこで本研究では,尿沈渣検査における健常者尿中の丸細胞の出現の有無と形態および性状について明らかにすることを目的とした。対象は78検体とし,現病歴あるいは既往歴に腎疾患および高血圧症がある者は除外した。尿定性検査は,随時尿を使用し採取後直ちに実施した。丸細胞の出現の有無および算定は,無染色の標本を作製し尿沈渣検査法2010に準じて鏡検を行った。丸細胞はWF(whole field)で算定し,確認された丸細胞は顕微鏡写真を撮り記録した。記録した写真はImage Jを用いて画像測定を行った。本研究により,健常者尿において丸細胞の出現を認め,形態学的に均質状と顆粒状に大別することができた。形態により生存率が異なり,細胞質が均質状の丸細胞は生細胞である可能性が示唆された。

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© 2022 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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