2022 年 71 巻 4 号 p. 644-650
近年,体液中でタンパク質や核酸を内包する小胞であるエクソソームが注目され,エクソソーム中のタンパク質,RNAから疾患診断のバイオマーカーが見いだされる期待が高まっている。それに伴い,血液中のエクソソームを抽出する試薬が開発されているが,その抽出効率について統一された結論は出ておらず,超遠心法が依然として信頼性高いという現状である。超遠心法は,設備の準備と技術の習得に高いハードルがあり,効率的なエクソソーム研究と臨床応用には不向きであり,市販の試薬での安定したエクソソームの抽出が期待される。本研究では,血液中のエクソソームからタンパク,mi-RNAで良好な抽出報告のあるExoRNeasy(QIAGEN社)と,新たに開発されたPlasma/Serum Exosome Purification Kit(NORGEN社)2種類の試薬について,血漿からエクソソーム中のmRNAの抽出効率の評価を行った。方法は健常人血漿を対象に,RNA定量と,エクソソームマーカーCD9によるRT-qPCR法を実施した。RNA定量値,CD9のRT-qPCR共通して,ExoRNeasyによる抽出したmRNAで良好な結果が確認され,本研究で市販の試薬を用いてエクソソーム中のmRNAの安定した抽出の確認がされた。この成果を基に,新たなバイオマーカーの確立の研究および,臨床応用につなげていきたいと考えている。