2024 年 73 巻 3 号 p. 539-548
日本の高等教育機関における医療系専門職養成課程では,卒前教育で最も重要なカリキュラムの一つに臨地実習がある。障害のある学生の他,LGBTQ等の性的少数者や留学生等々,多様化する学生(以下,多様な学生)が臨地実習に臨むにあたっては,学生自身,養成施設,実習施設の三者それぞれに,立場と責任,そして課題がある。併せて,この三者間で多様な学生の実習について,検討・試行する機会ともなる。これらの状況の中,養成施設と実習施設間では,多様な学生の理解に加え,学生の支援ニーズ等に基づく情報共有や環境調整等に関して,緊密な連携が求められる。今回,連携に関する事例として,日本臨床衛生検査技師会と日本臨床検査学教育協議会が共同運営する,臨床検査技師を対象とした臨地実習指導者講習会(以下,本講習会)を紹介する。さらに,本講習会プログラム中,「多様な学生の理解」に関連したグループワーク受講者へ,演習内容改善のために実施したアンケート結果を報告する。その結果,受講者は,障害とは何かを学ぶと共に,多様な学生の対応と配慮の必要性を理解し,多様な学生をどう受け入れ,どのように関わっていくかを考える機会となったことや,現実的な対応に苦慮している状況が明らかとなった。今後さらに養成施設と実習施設間の連携を深める上で,本講習会の活用に意義があると思われるので報告する。